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片恋

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彼の控えめで深くて、けれども脆い恋心を知った頃、わたしはまだ彼の友人でいた頃。彼に聞いたことがある。どうしてすきになったの?そんな純粋な疑問。


何を今更、みたいな顔をされるかと思っていたら、意外にも彼はわたしにふわりと笑いかけてきた。それはわたしに向けられてはいるけれどわたしのものじゃないので、少しだけ苛立つ。(嘘、嘘。少しなんてものじゃない。)恋する彼はなんて美しいのだろうと溜息をつきたくなる。

恋をすると、人は美しくなれると皆は言う。その通りだ、とわたしは思う。でもそれは、彼や皆に当てはまることであって、わたしのことではない。わたしは恋をしているというのに、醜くなるばかりだ。


「さっき、話しかけてくれたんだよ」


ほら、また、醜くなる。
そんな美しい彼をみるたびに、わたしはどんどん醜くなっていく。


作品名:片恋 作家名:kantou