R-10N
きし、とリオンの肩がきしむ音がして、それがいっそう愛しくさせる。
「俺は、あなたが、」
囁くより強く、井ノ内が口にしようとした熱っぽい台詞は、リオンが身を離した事で遮られた。
リオンは俯いたまま頭を振る。
「リオン…!」
「やめてください。私は、…ロボットです」
たとえ感情が高ぶっても、彼らが涙を流すことはない。そういう機能がないのだ。
しかし、その時リオンは確かに泣いていた。
ふ、と顔を上げ、涙をたたえたような青味がかった目で、真っ直ぐに井ノ内をみつめる。
「ここで、会えるだけで、…良かったのに」
震えた語尾を、井ノ内の唇が奪った。
桜色の唇は、ひやりと冷たい。
抱き締めあった体温が混ざるのを、二人は感じた。
向かいのビルの窓ガラスに、太陽が反射する。
もうすぐに、出社の第一陣が到着するだろう時間───
二人はただ、ひとつになったように抱き合っていた。