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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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トゥプラス

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日常


住宅街の一角から夜空に立ち上る煙。
 轟々と燃え盛る業火は地獄を思わせ、紅い炎に中から叫び声を木霊する。
 火事の現場に駆けつけてきた人々が声を上げた。燃え盛る屋根の上に何かがいる。
 紅蓮の炎を纏い躍る狐の姿が目撃された。しかし、そんなことがありえるはずがない。炎の影が見せた幻影か。誰もが自分の目を疑った。
 狐が天に向かって気高く咆哮し、姿を消した。
 夜空では蒼白い月が嗤っていた。
 どこまでも、どこまでも、鳴り響く赤いサイレンの音。
 それを除けば静かな夜だった。

 駅の近くには大きな商店街があり、それなりに賑わっているというのに、大通りを自転車で数分進み、道を一歩外れるとそこは、雑木林や古い家が立ち並んでいる。
 そんな街並みを背景に大きな下り坂を自転車で滑走すると、すぐ目の前には高校のグラウンドが見えてくる。『自然豊かな』が売りの一歩間違えると田舎臭い、周りをなぜか田んぼや農地に囲まれてしまっている高校――それがこの小春市にある、名前もほぼそのまんまの小春西高校だ。
 高校の周りには農地などの他に、すぐ横を流れる楓川という川がある。この川は大雨が降ると昔はよく反乱を起こして、学校の敷地まで川水が来てしまっていたらしい。そのため学校の川沿いには堀がある。
 農地や川が近くにある、自然の豊かさを売りにしている高校――つまり土地が安かったからここに建てられたに違いない。現に小学校も田んぼを挟んで向かい側に建っているし、坂の上と下では文化の臭いが違う。
 さて、小春高校では四月になり春休みも明けて、新年度を迎えて一週間ほどの日数が過ぎていた。
 二年二組の教室では各委員決めが執り行われていた。黒板の前にに立ち、司会進行を取り仕切っているの二人組の男女。前日決まった学級委員の葵城(きじょう)・月夜霊(つくよみ)ペアだ。
 容姿端麗に加えて秀才で、その上運動神経まで良く、学校でも女子の人気を集めまくっていて、非の打ち所がないと誰からも言われる葵城悠樹(ゆうき)が委員決めの話の進行をしている。 その脇ではミステリアスな雰囲気を全身に纏い、長い黒髪が特徴の美人系の月夜霊尊(みこと)がチョークを持ちながら書記をしている。