升田下宿の夕餉時
僕の名前は升田 留宇火玖。一発で下の名前が読める人は、本当にすごいと思う。ちなみに、名前の由来は、『絶対人とカブらないかっこいい名前』にしようと思ったからだそうだ。お母さんのセンスはおかしい。
学校で、一番最初に先生から名前を呼ばれるとき、めちゃくちゃ恥ずかしい。いつもいつも、「えっと・・・」といって、困ったような笑顔を向けられる。その度に僕はうつむいて「ルービックです」と言ってきた。
僕の悩みは2つある。1つは、名前の事。そして、もう1つは――――
「ただいま」
午後四時半。小学五年生が家に帰る時間としては、普通の時間だ。
ただ、これから先は普通の小学生五年生と時間の流れが違うと思う。
午後七時。掃除に洗濯を終え、僕が台所で一生懸命料理している頃。
「うぃーっす、帰りましたぁ」
「ただ今帰りましたぁ!おなかすいたーっ!」
顔を泥で少しだけ汚しながら、赤木さんと青谷さんが帰ってきた。
工事現場で働いている二人組で、二人ともとても大きい。青谷さんなんか、女の人なのに身長が170cmを優に超えている。しかも、25歳になった今でも、ゆっくりと伸びつづけているらしい。ちびの僕としては、すごくうらやましい。
赤木さんは髪の毛を脱色させていて、不良っぽい外見の25歳。青谷さんとは高校生からの顔なじみらしい。そんなワイルドな赤木さんは、酔っぱらったお母さんによく『日本男児は髪が黒の方がかっこいいんだから!そこに座りなさい!今からお母さんがあんたの髪の色を元に戻しちゃる!』と言われて、追いかけ回されている。
「お帰りなさい。赤木さん、お風呂沸いてますよ。青谷さん、もう少しでご飯できるのでつまみ食いはやめてください」
僕はフライパンでみじん切りにした野菜を炒めながら言った。よし、スープはできてるし、後はご飯をこの中に投入するだけだ。
「もーっ、留宇君細かい!いいじゃん、ちょっとだけ!」
「だめです。晩ご飯に食べる分減らしますよ」
「うぅ・・・・・・・」
「小五のガキに説教される25歳、なっさけねー」
「・・・おい赤木ぃ」
「じゃあ留宇、俺風呂入ってくるわー」
赤木さんは、目が吊り上っている青谷さんを無視して、お風呂へと向かった。青谷さんは空腹のせいか、上を向いてうなりながら自分の部屋へ向かった。これがいつもの光景。変な人たちだとつくづく思う。
僕の家は下宿をしている。と言っても、定員人数がたった3人の下宿。僕の小さい頃、お父さんとお母さんが離婚した。何でだかは知らないけど、お母さんはお父さんから慰謝料をたくさんふんだくる事ができたらしい。
そのお金を元に下宿を始めて、今までやっている。でも、それだけじゃ食い扶持が稼げないから、お母さんは会社でばりばり働いている。僕が小さかった頃は、宿の切り盛りと会社の両立で、ひいひい言いながら働いていた。やがて、僕は大きくなって、ご飯が作れるようになった。お風呂も沸かせるし、掃除も洗濯もできるようになった。
僕が小四の時、『お母さんの代わりに、夜は下宿の仕事をやるよ』と言ってみると、めちゃくちゃ喜んだ。お母さんが馬車馬みたいに毎日働いているより、僕も一緒に手伝って頑張ればいいと思ったから言った提案だった。
学校で、一番最初に先生から名前を呼ばれるとき、めちゃくちゃ恥ずかしい。いつもいつも、「えっと・・・」といって、困ったような笑顔を向けられる。その度に僕はうつむいて「ルービックです」と言ってきた。
僕の悩みは2つある。1つは、名前の事。そして、もう1つは――――
「ただいま」
午後四時半。小学五年生が家に帰る時間としては、普通の時間だ。
ただ、これから先は普通の小学生五年生と時間の流れが違うと思う。
午後七時。掃除に洗濯を終え、僕が台所で一生懸命料理している頃。
「うぃーっす、帰りましたぁ」
「ただ今帰りましたぁ!おなかすいたーっ!」
顔を泥で少しだけ汚しながら、赤木さんと青谷さんが帰ってきた。
工事現場で働いている二人組で、二人ともとても大きい。青谷さんなんか、女の人なのに身長が170cmを優に超えている。しかも、25歳になった今でも、ゆっくりと伸びつづけているらしい。ちびの僕としては、すごくうらやましい。
赤木さんは髪の毛を脱色させていて、不良っぽい外見の25歳。青谷さんとは高校生からの顔なじみらしい。そんなワイルドな赤木さんは、酔っぱらったお母さんによく『日本男児は髪が黒の方がかっこいいんだから!そこに座りなさい!今からお母さんがあんたの髪の色を元に戻しちゃる!』と言われて、追いかけ回されている。
「お帰りなさい。赤木さん、お風呂沸いてますよ。青谷さん、もう少しでご飯できるのでつまみ食いはやめてください」
僕はフライパンでみじん切りにした野菜を炒めながら言った。よし、スープはできてるし、後はご飯をこの中に投入するだけだ。
「もーっ、留宇君細かい!いいじゃん、ちょっとだけ!」
「だめです。晩ご飯に食べる分減らしますよ」
「うぅ・・・・・・・」
「小五のガキに説教される25歳、なっさけねー」
「・・・おい赤木ぃ」
「じゃあ留宇、俺風呂入ってくるわー」
赤木さんは、目が吊り上っている青谷さんを無視して、お風呂へと向かった。青谷さんは空腹のせいか、上を向いてうなりながら自分の部屋へ向かった。これがいつもの光景。変な人たちだとつくづく思う。
僕の家は下宿をしている。と言っても、定員人数がたった3人の下宿。僕の小さい頃、お父さんとお母さんが離婚した。何でだかは知らないけど、お母さんはお父さんから慰謝料をたくさんふんだくる事ができたらしい。
そのお金を元に下宿を始めて、今までやっている。でも、それだけじゃ食い扶持が稼げないから、お母さんは会社でばりばり働いている。僕が小さかった頃は、宿の切り盛りと会社の両立で、ひいひい言いながら働いていた。やがて、僕は大きくなって、ご飯が作れるようになった。お風呂も沸かせるし、掃除も洗濯もできるようになった。
僕が小四の時、『お母さんの代わりに、夜は下宿の仕事をやるよ』と言ってみると、めちゃくちゃ喜んだ。お母さんが馬車馬みたいに毎日働いているより、僕も一緒に手伝って頑張ればいいと思ったから言った提案だった。