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 ハッと我に返った。
『お風呂空いたからさっさと入るのよー!』
 外にまで響き渡る母の声。バイクから慌てて降りる。自分は何をしていたのだろう。誰と話をしていたのだろう……。
「ックション!」
 くしゃみと同時に鼻水も勢いよく出てしまった。体は大分冷えていた。
「今行くー!」
「じゃあね」そうクラブマンになんとなく語りかけると、バイクシートをかける。クラブマンは、無言だった。
 温かいお風呂に入ってもシートの冷たさと跨った時のフォルムが臀部に残っていた。
「センスがある……か」
 鼻の下まで湯に浸かり妄想する。自分自信の疑心暗鬼でしかないあのクラブマンとの対話が、いつしかこの先の未来への第一歩をふみだしたかのような、胸につかえていた何かを拭い取るかのような、そんなものに変わりつつあった。欲し始めていた。新しい刺激を。自分が打ち込める何かを。

 今夜のお風呂はのぼせるほどの長風呂になった。


***続く