顔 上巻
一之瀬は笑うだけでその後を話す気配が無かった。
大川は作れるだけの笑顔で、笑いに同調しながら、質問を続けた。
「じゃぁ、闇医者のアパート、なんで離れたんだい?」
もう誰も、昔のオレ、オレの顔じゃなかったからさ。
居る必要ないじゃん。変な外人やワケありな人間ばかりのところに。
ドヤと違って、ヒトの関わりが多いからな。
「女がいたのに?」
オンナ?よしてくれ。
何度か寝ただけの女だよ。
「でもおまえさんの、昔の顔を知っていた。」
だから?
「女の変死体があがったらしいんだ、2年前、闇医者夫婦殺害と同じ頃。」
ふ~ん。なに?またオレ。オレが殺したって?
オレ?オレは殺してないさ。
おいおい何人殺させればいいんだい?
大川は、疑いの目をそらした。
「で、そのあと、どこにいったんだい?」