まおー転生
第1話_エクストリーム生徒会選挙!
「私がこの学園の学園長――天道(てんどう)舞桜(まお)だ」
収容人数約一万五千人を誇る巨大なホールのステージ立つ美少女。
桜色のロングヘアを風に靡かせ(黒子たちが扇風機で風を起こしている)、端正で知的な顔立ちだが学園長と呼ぶには若く、この学園の白い制服で身を固めている。
そう、この美少女は学園長で生徒なのだ。
天道舞桜の個人データの入手は、簡単に情報漏洩してしまうような企業や行政に比べ、断然ガードが堅い。なぜなら、彼女は経済市場において世界を支配する超巨大グループ企業の会長の孫娘だからだ。
トップシークレットな彼女だが、人々から投げかけられるよくある質問にはちゃんと会見を開いて答えている。
――桜色の髪の毛は地毛だが、なにか問題でもあるのか?
センセーショナルなこの発言は、長らく論争を続けていた〈地毛派〉と〈染め派〉の戦いに終止符を打つこととなった。しかし、ネットでは未だに〈染め派〉が活動を続けている。ちなみに〈ウィッグ派〉などの少数派は最初から相手にされなかった。
事あるごとにマスコミにネタを提供してくれる舞桜様(信者は様付けしている)だが、もっともホットなネタは超巨大学園都市を造ってしまったことだろう。
美しかった国(過去形)――日本のアバウトに言うと相模湾ら辺に造られた人工海上都市アトランティス(一部では魔術師たちが浮上させたとも)。
なんかの圧力で治外法権のこの島の中心部に、私設舞桜(まおう)学園高等部がある(天道舞桜は『まお』だが、学園の名は『まおう』と読ませる)。
そして、まことにお日柄もよい今日は舞桜学園の第一期入学式なのだ!
新入生の数は約五〇〇〇千人で、収容人数一万五千人のホールはエキストラの皆さんで埋め尽くされている。
熱気と歓声に包まれるホール。エキストラの皆さんが給料分働いている成果だ。
そんな異様な空気なせいで緊張と不安を顔に浮かべる夏(なつ)希(き)。
「(新しい学校だし、制服もかわいかったから受験したけど……失敗だったかも)」
入学式早々、心の中で後悔の言葉を呟く夏希だった。
栗色のセミロングヘアが似合う、良くも悪くも平凡な少女――岸(きし)夏希(なつき)。
作品名:まおー転生 作家名:秋月あきら(秋月瑛)