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道徳タイムズ

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「ようこそ、心のネットワーク中枢部へ」
 そこにいたのは、啓輔さんと夕菜。夕菜はなんだか申し訳ない顔をしていて、啓輔さんは微笑んでいた。私と遊馬は、あまりにも普通な対応に状況がつかめていなくて黙っていた。すると突然頭上から何かが割れる音がする。
『祝! ネガティブ撃退!』
 紙ふぶきが落ちてきて上を見るとくす球があって、そこにはそう書かれていた。
「「どういうこと!?」」
 私と遊馬はいっせいにそういった。すると夕菜が
「ごめんなさい!」
と謝る。何故夕菜が謝るのか、やっぱり状況がつかめない私は何も言えなかった。しかし遊馬は
「ネガティブはここにいないのか?」
と言葉にした。
「ネガティブはもういないよ。君達がネガティブだったんだから」
「私たちが?」
「そう、ネガティブが取り付いたのは桜さんと君達」
 それから啓輔さんは私たちに事のあらましを説明してくれた。
まず、「ネガティブ」というのは負の念の集合体ではあるけれど、生命ではなく、他人の思考回路を洗脳するウィルスのようなもの。この心のネットワークは、夕菜の恋愛感情によって半ば事故でできてしまった世界らしい。夕菜はとても強い想像力の持ち主で、魂の精霊が夕菜に惹かれて夕菜に憑依。そんなときに夕菜が考えた理想を現実にできる世界というのが憑依した精霊の力で不完全な形で創られた。だけど、不完全だった所為で大変なものまで出来てしまった。それがネガティブ。ネガティブは最初夕菜を洗脳しようとはしたんだけど魂の精霊と、そのときにはもう恋人になっていた啓輔さんが夕菜を守って回避。
「だけど、すぐそばにいた三人の心に取り付いちゃったんだよね」
 啓輔さんは苦笑いでそういった。それから、夕菜はこの中枢でおとなしくしてるように言われて留守番。啓輔さんはこの世界に来てしまった私を案内するつもりだったんだけど、心だけをネガティブにのっとられてた私は夕菜の心の扉に拒否されて電撃をくらい、啓輔さんの手ですぐそばにあった啓輔さんの扉の中で休ませてもらっていたらしい。しかし、夕菜がいなくなったと魂の精霊に教えられて啓輔さんは慌てて夕菜の元へ。夕菜の扉には結界が張ってあって、ネガティブは夕菜の心の中枢には入れないけれど、逆に啓輔さんのようにネガティブに取り付かれていない人なら直接ここまで来れるらしい。
「だったら何で説明してくれたり、さっき会ったときに夕菜を連れ去ってみせたりしたんですか?」
「説明できなかったんだよ。君が自分で乗り越えないといけないことだから。それに、愛子ちゃんの心は……」
 もう一人の愛子はネガティブにのっとられてなお、夕菜を守るということだけは忘れなかったみたいで、ネガティブに感染した桜お姉ちゃん。『楼世』から夕菜を守り、私と遊馬さえも止めたらしい。
「夕菜に迫ってる敵って、私たちだったんですね」
 私は苦笑いして脱力した。最初夕菜は泣いていると思っていたのに笑ってるし、本当にいろいろ思い過ごしで済んだのはいいけど。
「本当にごめん!」
「ま、まあ、夕菜が無事だったし、思い過ごしならそれはそれでよかったと思うんだが……」
 正直、私も遊馬ももう微妙な表情しか出来なかった。こうして、夕菜消失事件と、心のネットワークでの夕菜救出劇は終わった。そして、私たちはそれぞれの日常に戻っていくのだった。


作品名:道徳タイムズ 作家名:黒衣流水