朧木君の非日常生活(13)
まさか。
俺は。
完膚なきまでに。
「騙されたんだよ、朧木くんは。僕が鎌鼬村の出身ということを除いてね。」
騙されていたのか。
「大変だったよ、僕も騙されたフリをしなくてはならないからね。鎌鼬村のこと後悔してるとかさ。馬鹿みたいにまんまと出てきてくれたからよかったけど」
嘘だろ。
「朧木くんが、僕のことを鎌鼬村の生き残りと気づいた時に分かったよ。朧木くんが騙されていることにね」
なんという失態。
「それにさっき、座敷ちゃんが止めていたじゃないか『やめようよ』ってね」
また見落とした。
見逃していた。
「朧木くん、今君が信じていいのは、僕と座敷ちゃんだけだよ」
考えても見ろ。
当たり前じゃないか。
この現実離れした中で、得体の知れないものを信じることなんて普通はしない。
俺は、滑稽だ。
「こればっかりはしょうがないよ、朧木くん。さぁ、妖となりし者よ、始めようじゃないか。クライマックスを盛り上げてくれよ」
作品名:朧木君の非日常生活(13) 作家名:たし