朧木君の非日常生活(13)
「・・・・・・蜻蛉さん」
かける言葉が見つからなかった。
見つけることが出来なかった。
「いいんだよ・・・・・・朧木くん」
蜻蛉さんは、それだけ言うと座敷ちゃんが残したであろう櫛を拾い、無造作にポケットに入れ、続けて煙草を一本吸った。
「朧木くん、もうそろそろ鎌鼬村の輪廻が終わるよ」
蜻蛉さんがそう言った、その時。
辺り一面に草原が広がった。
鎌鼬村から解放されたのだ。
本当に終わったのだ。
悪夢の様だけど悪夢ではない時間が終わったのだ。
何故か俺の心に蟠りを残して。
「朧木くん、ついて来てくれ」
「・・・・・・うん」
俺は、一人で歩いていく蜻蛉さんの後を急いで追った。
作品名:朧木君の非日常生活(13) 作家名:たし