朧木君の非日常生活(13)
「そして、この神座の舞台に鎮宅七十二霊符を貼らせてもらったよ」
そして蜻蛉さんは、護符の説明をしていく。
一つ一つ、丁寧に。
いやらしく。
実に、嫌味臭い。
「鎮宅十三番、凶変侵害。鎮宅三十五番、龍神勧請。鎮宅四十番、神祠精魅。鎮宅四十四番、刑罰獄死。鎮宅五十九番、鬼怪驚異」
蜻蛉さんは実に楽しそうだ。
相手を追い詰め、どうしようもないくらい追い詰めた時の蜻蛉さんは実に楽しそうだ。
実に、楽しそうだ。
だから、怖い。
蜻蛉さんは、怖い。
それでも、凄い。
「風水という思想、神座、火、護符・・・・・・相乗効果はどうだい? 効果覿面だろ? さぁ・・・・・・首を括れよ」
対する妖の答えは・・・・・・無い。
いや、答えることなど出来やしない。
だってもう跡形もなく消えているんだから。
初めからそこに存在していなかったかのように。
消えていた。
成仏・・・・・・というのだろうか。
それすらも分からないくらい、綺麗に消えていた。
まるで、今この場で神隠しにでもあったのかのように。
作品名:朧木君の非日常生活(13) 作家名:たし