朧木君の非日常生活(13)
蜻蛉さんも勝利を確信しているのだろう。
ゆっくりと時間をかけて話し始めた。
「気乗風則散 界水則止 古人聚之使不散 行之使有止 故謂之風水」
そう、蜻蛉さんは誘導していたんだ。
これは古来中国で郭璞に仮託された『葬書』の言葉。
「気は風に乗れば則ち散り、水に界せられば則ち止る。古人はこれを聚めて散らせしめず、これを行かせて止るを有らしむ━━故にこれを風水と謂う」
中国古来から伝わるもの。
過去の異能の天才たちが残した思想。
「陰宅・・・・・・すなわち死者の住まう場所。凶事を示したことにより、お前はもう安らかに眠ることすら出来ないんだよ」
この思想から逃れる事など誰も、出来やしない。
出来やしないんだ。
「くくく、そして僕たちが立っているところが陽宅、すなわち生者住まう場所の吉事の方角さ。実に滑稽だね、妖。狡猾で残酷な罠にはまった気分はどうだい?」
蜻蛉さんは嘲笑う。
ここまで来たら、騙された俺に出来ることなんて何一つない。
ことの成行きを見守ることしか出来ない。
作品名:朧木君の非日常生活(13) 作家名:たし