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ハロウィンの夜の殺人

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11月 1日 ミッシェル・コーネリア殺人事件


日付が変わった。
ドランは校舎にされた飾り付けを片づけて回っていた。
「ハァ……あとどれくらいあるんだ?」
独り言をつぶやいた時どこかで銃声の様な音が聞こえた。
「何だ今のは……?銃声?」
少しだけ考えてかぶりを振る。
なわけないか、本の読みすぎかな……。
誰かが走ってくる音が聞こえた。
音の方向に振り返る。
ダナエだった。
「ドラン、今銃声が聞こえなかった?」
「えっ?じゃあ今のは幻聴じゃなくて……」
「私もハッキリとこの耳で聞いたわ!行きましょう!」
ダナエに腕を引かれドランは走った。
銃声のした方向へ。
「こっちよね」
「ああ、多分」
色々な場所を調べた。
「こっちでもないな……」
「じゃあ、銃声はどこから……?」
「まだ調べていない場所があるはずだ」
「まだ調べていない場所……?」
そこで二人は同時に言った。
「「ダンス・ホール!」」
二人はダンス・ホールにかけて行った。
そこに殺人者が待ち構えているなど考えてもいない。
ただ一刻も早く音の原因を知りたかった。
開けっぱなしになっているドアから中に入った。
そして見てしまった。
”音の原因を”。
「おい……嘘だろ……」
「ミッシェル……!」
テーブルにミッシェルが座っていた。
額に真っ赤な花を咲かせ。
その花を咲かせたであろう拳銃は目の前のテーブル……お菓子の山の中に置かれていた。
「警察を……!」

「ふむふむなるほど……」
フィリップ警部は遺体を観察しながら言った。
「なぜ彼女はここに……?」
「パーティーの後の片付けをしていたんです」
ダナエが答えた。
「彼女一人で?」
「いいえ」
「では彼女を最後に目撃したのは……?」
「ミッシェルと同じダンス・ホールの係かしら……」
自信なさ気に言った。
「あなたもパーティーの係ではないんですか?」
「そうです」
「彼女は校舎の係なんだ」
ドランが代わりに言った。
「なるほど。それであなたは?」
「彼は私を手伝ってくれていたんです」
「そうですか。それでは彼女を最後に目撃したという人物を教えていただけますか?」

「あなたが最後の目撃者ですね?」
「はい……多分そうです」
トムは警部と向かい合って座っていた。
「あなたが最後に彼女を目撃したのは何時頃です?」
「パーティーが終わったあとですから……10時頃でしょうか」
「その後あなたは彼女を残して帰ったそうですね」
「はい」
「一体なぜです?」
「妹の誕生日だったんです」
「そうですか」
警部は興味なさ気にこう言った。
「結構です」

ドランはダンス・ホールに呼び出された。
「ドランチェスト・オルデーラ・ゲーテルさん。あなたをミッシェル・コーネリア殺害容疑で逮捕します」
「はぁ!?ちょっと待てよ!」
ドランの反論も虚しく強引に手錠をかけられた。
「弁解なら警察署で」
「なんで俺が逮捕されなきゃいけないんだよ……!」
「この拳銃からあなたの指紋が検出されました」
フィリップ警部は拳銃を持ち上げた。
「何かの間違いだ!俺はその銃に触っちゃいない!」
「分かりました。弁解は警察署でね」
ドランが連行されようとした時ダンス・ホールに優雅な服装に身を包んだ女性が現れた。
「ここは立ち入り禁止だ!」
警官が女性に向かって言った。
「おあいにくさま。私は立ち入りOKなの」
女性は警官に何かを見せた。
それは市長に与えられた自由捜査許可証。
それが意味するもの。
それは彼女が探偵だということ。
「くっ……」
警官は悔しげに唸りながら女性に道を開けた。
「これはこれはミス・フローレン」
警部はうやうやしくお辞儀をした。
「はじめまして警部さん」
フローラは警部に近づくと言った。
「警部さん、彼は犯人じゃないわ。解放して」
「ですが、拳銃から指紋が……」
「そんなもの彼を犯人に見せるために決まってるでしょう。よく考えれば分かることですよ。それじゃあピースがはまりませんからね」
警部は悔しそうにフローラを睨みつけた。
「悪いですけど、この事件私に任せてもらいましょう」
「それは無理ですな……」
フローラは黙って警部に自由捜査許可証を見せた。
「私が真犯人を暴きだして見せますわ」
警部は悔しそうな表情をした後挑戦的に笑って言った。
「有能なあなたならさぞ短期間で犯人を捕まえられるでしょうね」
「ええ、もちろん」
「それでは二週間です」
「ずいぶんたくさん時間をくれるのね」
フローラは挑戦的な笑みで警部に応えた。
「その勝負受けますわ」

警察が去った後のダンス・ホールにはフローラとドラン、ダナエが残っていた。
「あ、あんたは……?」
突如現れた救世主にドランは尋ねた。
「あら、姉さんを忘れるなんてひどいじゃない」
フローラが笑みを浮かべながら振り返った。
「まさかあんたフローレン……フローレン・ローゼリアか!?」
「ようやくピースがはまったわね」
ドランとフローラは親戚同士だった。
家が近かったこともあり二人は子供時代をほとんど共に過ごした。
だからドランは少なからず彼女の影響を受けており、ドランにとって彼女は姉と呼べる存在だった。
フローラは子供の頃から高い推理力を有していて数々の事件を解決していた。
ほとんどが「落し物の捜索」程度だったが二度だけ殺人事件に遭遇したことがあった。
しかしフローラは脅えるそぶりを見せず嫌がるドランを助手として引き連れあっという間に事件を解決してしまった。
また彼女は子供の頃から物事をパズルに見立てた発言を多用していた。
彼女の影響を受けているドランは今でも「ピースがはまらない」などと発言することがある。
「ドラン……知り合い?」
ダナエが尋ねた。
「忘れてた。紹介するよ。俺の姉さんのフローラだ」
フローラがダナエに方に向き直って言った。
「フローレン・ローゼリアです。以後お見知りおきを。ちなみに姉ではなく親戚です」
「そう堅いこと言うなよ〜。フローラ、彼女は俺の同僚のダナエ・スターシャだ」
「どうも」
ダナエが頭を下げたのでフローラも軽くそれに応えた。
「フローラの手にかかればどんな難事件も速攻で解決だ」
ドランが誇らしげに言った。
「名探偵ですのね」
ダナエが感心して言った。
「おほめの言葉ありがとう」
フローラはニッコリと笑みを作り、続けた。
「それじゃあ捜査を開始させてもらおうかしら」
突然の話の変化にドランもダナエも面食らってしまった。
「まずは昨日の出来事の整理から始めるわ、ミス・ダナエ私についてきてください」
フローラはドラン達に背を向けるとダンス・ホールの出口に向かった。
指名されたダナエもそれに続く。
ドランも後を追おうとした。
「悪いけどあなたはここで待ってて」
フローラに言われドランはしぶしぶ従った。

しばらくすると二人は戻って来た。
ダナエの表情からかなりの緊張を強いられることが分かった。
「次はドラン、あなたよ。ついてきて」
ダナエが不安そうにドランの顔を見つめていた。
ドランはダナエに向かって力強くうなづくとフローラの後を追った。
フローラが向かった先にはいろいろな道具をしまっている倉庫があった。
「おい、こんなところで何をするんだよ」
作品名:ハロウィンの夜の殺人 作家名:逢坂愛発