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ハロウィンの夜の殺人

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extra 犯人編


私はスミスに恋をしていた。
ダナエというライバルがいて、一筋縄じゃいかないからこそ素敵よね。
スミスという目標があるためか毎日を精いっぱい過ごすことが出来てるわ。
仕事を終え家に戻るとポストに手紙が入っていた。
綺麗な封筒に入れられていたのでワクワクしながら封を切ったわ。
その中身を見た瞬間私は手紙を床に落とした。
差出人はミッシェル・コーネリア。
あの清楚でおとなしいミッシェルだ。
私はしばらく現実を認めることが出来なかった。
だってスミスを諦めてあいつの奴隷になれって言うのよ!?でもそれを拒否すれば秘密をばらまくと言ってるし、どうすればいいの……?
私は誰かに相談することにした。
相手はもう決まっている。
昔から慕っていたフィリップ叔父さんだ。
叔父さんは警部だしきっとすぐに解決方法を思いついてくれるわ。
私は叔父さんに連絡を取った。
三日後なら会えるみたいなので私はその日まで待つことにした。
叔父さんと会う場所は私のお気に入りのカフェにした。
私はあそこのコーヒーが大好きだった。
今までも何かで悩んだ時はそのコーヒーを飲みながら考え、いつでもベストな解決方法を思いつかせてくれた。
子供の頃から行っていた店で叔父と一緒に行ったことも何度かある。
カフェでの思い出を回想していた私は叔父さんの声で現実に引き戻された。
「やあ、アマンダ。久しぶりだね」
「はい、叔父さん」
「立ち話も何だからとりあえずカフェに入ろう」
私と叔父さんはカフェの中に入った。
叔父さんの提案で隅の席に座った。
ウェイトレスにコーヒーを二つ注文すると叔父さんは話を始めようと言った。
「叔父さん。実は私同じ職場に好きな人がいるの」
「ほうほう。それは華やかじゃないか」
叔父さんは優しい口調で言った。
やっぱり叔父さんは優しい。
昔から私のことを娘の様に可愛がってくれた。
「それでその人とお前の悩みがどう関係してるんだ?」
「うん、あのね。その人とってもかっこよくて、私以外にもその人のこと好きな人がいっぱいいるの」
「それで?」
「それで実は……その内の一人から脅迫されてるの」
「何だと……!」
叔父さんがテーブルに拳を叩きつけた。
私のために怒ってくれてるんだ。
「叔父さん……?」
私は心配して尋ねた。
「いや……なんでもないんだ……それで何と言って脅迫されているんだ?」
「スミス……あっ私が好きな人の名前ね、スミスを諦めて自分の奴隷になれって言うの」
「そんな言葉に従う必要はない」
「だけど従わなかったら私の秘密がバラ撒かれるの」
「なんだい秘密って」
私は迷った。
叔父さんに私の秘密を打ち明けるか。
大丈夫相手は叔父さんよ。
私は決意すると口を開いた。
「実は私、飲酒運転で幼い子を撥ねてしまったの、でも運よく事件にならなかったわ」
「なんだそのことか」
「えっ?」
「そのことなら私がもみ消したんだよ。大事なアマンダが捕まったら大変だからね」
「叔父さん……」
私のために……。
「でもその秘密がバラ撒かれたら私……」
「分かってる。叔父さんがなんとかしてあげるからちょっと待ってなさい」
叔父さんはしばらく目を閉じて何かを考えた。
そして目を開くと言った。
「解決方法は一つだけある」
「なに?」
「だけどそれにはお前の覚悟が必要だ」
「どんな覚悟が?」
「人を殺める覚悟だ」
突然の言葉に私はしばらく口を開くことが出来なかった。
「お前を守るためにはその女を殺す必要がある」
その時ウェイトレスがコーヒーを運んできた。
私と叔父さんの前にそれぞれコーヒーが置かれた。
「突然のことに驚いたかもしれないが……まあ飲みなさい」
叔父さんがコーヒーを示して言った。
そして自分も温かいコーヒーを喉に流し込んだ。
「うん……」
私はカップを手に取ると中身をゆっくりと口に流し込んだ。
独特の甘みが口の中に広がった。
「アマンダ、人生には人を殺めなければならない時が必ずある。それが今なのだ」
私は黙って叔父さんの次の言葉を待った。
「アマンダ、殺人とは人間が次なる種族に進化するための試練なのだよ。その殺人が困難なら困難なほどそれを成し遂げた時に大きく成長することが出来る」
叔父さんの哲学的な口調に私は飲みこまれていた。
「これは神がお前へ授けた試練なんだ。大丈夫安心しなさい、叔父さんも手伝ってあげるから」
「叔父さんが殺してくれるの……?」
「いや、殺すのはお前だ。その人物を殺めるのはお前でなければならない。それが神の定めた運命なのだ」
「じゃあどうやって……?」
「学校で何か大きなイベントはあるか?」
「10月31日にハロウィン・パーティーがあるわ」
私はハロウィン・パーティーについて説明した。
「その日に殺そう」
「どうやって殺すの……?」
「一番簡単な方法は射殺だ」
「射殺って撃ち殺すってこと……?」
「ああ、そういうことだ。だがただ射殺しただけじゃすぐにバレてしまう」
「手袋をはめて指紋が付かないようにするのね?」
これで指紋が付かない、私が犯人だと分からない……はずだ。
「それだけじゃだめだ」
「他に何をするの?」
「他の人物の指紋を付ける」
「なんで?」
「そうすればその人物が犯人になる。そしてお前は完全に疑われない」
「でもその人は……」
「アマンダ、情けなど捨てるんだ。人間の持つ感情の中で最もいらぬものが同情だ、それがある限りお前は永遠に人間のままだ」
情けを捨てる……。
私は叔父の言葉をかみしめた。
確かに同情ばっかりしてたら、人生はうまくいかない。
だけど……。
「アマンダ、覚悟を決めるんだ」
私はうなづいた。
どうすればいいのか分からなかった。
「アマンダ、お前が本当に覚悟を決めたなら、私の家へ来い」
そう言うと叔父さんは腰を上げてカフェを出て行ってしまった。
私はしばらく考えた。
情けを捨てろ、情けを捨てろ、情けを捨てろ。
叔父さんの言葉が頭の中で再生される。
「決めたわ」
私は腰を上げると叔父さんの家へと向かった。

私は叔父さんの家にたどり着いた。
叔父さんはそれなりに財産があるので家も大きい。
一人で住むには広すぎるのではないだろか。
子供の頃からその事が疑問だった。
「叔父さん、アマンダよ開けて」
しばらくすると足音が近づいてきてドアが開いた。
「覚悟を決めた様だな。よろしい、入りなさい」
私は家の中に通された。
子供の頃に来た時と同じだった。
相変わらず家具は綺麗に置かれている。
リビングに着くと叔父さんは「楽にしていてくれ」と私にソファーに座って待つように言い、奥の方に消えてしまった。
戻って来た叔父さんが持っていたのはリボルバー拳銃だった。
「お前にこれを渡しておく」
叔父さんは私の目の前のテーブルの上に拳銃を置いた。
「持ってみなさい」
私は叔父のさんの言葉に従い拳銃を持ち上げた。
ずっしりとした重量感が腕に伝わる。
「思っていたより重い……」
「初めて本物の銃を持った時はほとんどの者がそう言う。撃ち方は分かるか?」
「うん……撃鉄を持ち上げて……」
私は拳銃の撃鉄を持ち上げた。
思ったより堅い。
「引き金を引く」
カチリという乾いた音が鳴った。
やはり弾は入っていない。
作品名:ハロウィンの夜の殺人 作家名:逢坂愛発