バスルームの楽園
真っ白い紙に浮かぶ薄い文字。磯谷しぶきはまた何かを書き付けて、私に見せる。
「昨日はありがとう」
どうやら昨日世話をしてやったことについて礼を言っているようだ。
「こちらこそ、菓子折り有難うございました。昨日のことはあまりお気になさらないで下さい。頼まれたことですから」
「雫ちゃんはいつも一人なの?」
「ええ。私は極度に協調性に乏しいので。もし磯谷さんがクラスの方たちと友好を深めたいのであれば、私とは行動を共にしない方がいいと思います。」
はた、と横を見れば大きな瞳をおっきくさせてこっちを見つめる磯谷しぶき。しばらくそうした後、ばんっ、とメモを差し出した。
「雫ちゃん、友達になってください…?」
思わず声に出して読んでしまうような言葉に、今度は私が目を見開いた。どうやらこの転校生、話せないだけでなく、人を見る目もないようだ。