バスルームの楽園
ゆらゆら、きれい。
ああでもなんて、残酷。
声の出せない転校生がやってきたのは一学期の期末前というなんともへんてこな時期だった。尖った華奢な顎に、耳の上でぱっつり切り揃えられた黒い髪の端正な顔立ちの転校生、磯谷しぶきは私の斜め前の席に座ると徐にキレイな青色の鞄から小さなメモとペンケースを取り出した。そしてなにやら書き付けてくるり、と私の方を向いて無言のままメモを差し出した。クラスの視線が突き刺さる中、私も無言でそれを受け取った。
「_________________。」
挑戦的に磯谷しぶきが笑い、メモのかさついた感触が指先に残る。チャイムが鳴る。
私と、磯谷しぶきの闘争が、始まったのだ。