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かいごさぶらい
かいごさぶらい
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かい<上>ただひたすら母にさぶらう第一章完

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2005/8/11(木) 午後 0:27
某月某日 母は、自分の「いま」の気分や気持ちに正直である。自由奔放とも言える。凡人の私がこの母のような域に達することは、、、不可能か、、、。

「これどうしょうかな~、どうしたらえ~かな?」母が思案投首。ティシュの山を眺めて言うのだ。

「僕が後でちゃんと、送っといたるから、こっちに置いといて」1時間以上かけて母が一生懸命制作したものだ。

「わー、うれしい、にいちゃん、してくれるのん、わて、どうしょうか、おもうててん」夕食後、母はティシュを一枚一枚丁寧に折り畳んで、積み重ね、その束を、ためつすがめつ、どうするか、悩んでいたのだ。

「わたしな~、おくらなあかんけど、どうしておくろうかな~、おもうててん、ちゃんと、してくれるの?」

「輪ゴムでな~、こ~して、括って、ほら~、これで、明日送れるやろう」

「そうや!、そうしよう、おもててん、かしこいな~、あのひともな~、みとんねん!」

「あれは、テレビの人や、はっは~ん、お袋ちゃん、あれはな、お袋ちゃんを見てるのとちゃうがな~」

「そんなことないわ、みてたわ、わたし、しってんねん、さっきからな」

「そうかな~、お袋ちゃんの好きなテレビちゃうからな~」

「そうやねん?なにしてるん、わからんねん?」

「漫才師や、最近多いねん、僕も名前あんまり知らんしな」

「にいちゃんもわからんのん?ふ~ん」

「あー、お袋ちゃん、もう止めときや、その、ティシュ箱は明日学校(デイ施設)へ、持っていくやつやからな」今日、新しく、出したばかりのティシュ箱だ。半分ほどに減ってしまっている。

「なんでやのん?これしとかな、あかんやんかー?」

「ほら、此処に、もう、送るやつさっき作ったやんか、な~」

「あんた、なんで、それもってんのんっ?」

「さっき、お袋ちゃんに頼まれてな」

「そうか~、もうそれでえ~のんかいな?」

「うん、もう、今日のぶんは終わりやで~」

「なんで、あんなことしてるん?」と、母の視線がまたテレビの画面に。

「面白いかな~、おもうてちょっと見てんねん」

「こんなんみてんのんかーっ!しょうもない、どこか、かえてー!」
何処に変えても、母が楽しめる番組はないのだが(俗世にドップリ浸かっている私と母とでは違うか?)。「此処はどうや?、」と私はチャンネルを一つずつ変えながら母に尋ねる。母が「もう、えーわ!」と言うまでこの作業は続くのだ。






   「ここどこや?あれだれや?なにしてるん?」テレビと母、その(5)

2005/8/12(金) 午後 0:51
某月某日 会話が出来ると言うことは素晴らしいことだ。認知症であっても、関係はないのだ。私は「言霊」を信じている。

「あーっ、何してるん、また、入れ歯はずして、はずしたらあかんやんかー?」母は入れ歯を嫌がる。合わないようだ。

「ふん、、、ふん、、、」母は平然と、聞く耳もたぬ表情で。

「ほれー、そんなとこ、置いて、また失くしたら、どうするねんや、歯医者さんが、言うてたやろ~、入れ歯はずしたら、歯茎が痩せて、もの食べられんようになるから」と、母に私の口を見せて説得するのだが。

「しらん、はずしてない、いぃーやっ!」と負けずに母は、大口開けて私のほうに顔を向ける。

「ほ~ら、下の入れ歯ないやんか」案の定、下の入れ歯が無い。

「いぃーやっ!そんなおこらんでもよいでしょっ」と、悠々たるものだ。

「怒ってないで~、ご飯食べられへん、言うてんねんで~」

「たべてるわー!」

「噛まれへんやろ~、下の入れ歯無いんやから」

「かめへんのっー!」余裕綽々だ。

「あかん、あかん、ちゃ~んと、入れ歯しとかな」こちらの方が焦る。

「ここどこや?」と、素早く話をそらし、母はテレビを指差す。

「うん、何処かな~、ちょっと、分からんわ」

「あれだれや?」

「アナウンサーや」

「なにしてるん?」矢継ぎ早に話題を逸らす母。

「大阪な、昨日、37度もあって今年一番暑かったんやて~、そう言うたはんねん」
テレビの画面が変わる都度、似たような会話が続き、半時間後、母はようやく下の入れ歯を装着した。省略したが、この間に、入れ歯のことで「アホー、バカタレー」と母は面白そうに何度、私に言ったことか。ようするに、母は私を相手に会話で遊んでいたのだ。