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アヤカシ模様

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「いえ、そうは見えないですけど」
「まあ、例をあげるなら、坊主、おまえだ」
「僕?」
 きょとんと透は己を指さす。
「そう。おまえの見方と同じようなものなんだ。おまえの姿を見た友人は、おまえを学校の友人だと認識している。そして今日初めて出会ったアヤメは、コカゲがついたおまえをアヤカシだと思った。そしておまえの過去を知っている祓い人は、村に災いを齎した影の呪いだと断言する」
「はい・・・」
 僅かに口元を引き締めて、透は頷いた。ルビィは後ろを示す。
「そしてこのアヤメを、おまえは噂を聞いて影法師だと勘違いした。昔からこれを知っているおれは、極度の人見知りで勘違いされやすいばかな奴だなぁと思っている」
「うう、もっと歯に衣を着せて下さいよ」
「今さら過ぎだよ。まあ、こいつはほかでもいろいろ呼ばれている。おくりびとだの闇の使いだの縁起の良さそうなものは一つもない」
 透はルビィの後ろから啜り泣きが聞こえてこないかと内心気が気でなかった。ルビィは卓袱台に肘をおいてもたれかかった。
「おれの言いたいことがわかるか」
「なんとなく」
 透は頷き、ゆっくりと膝を進めた。畳の上を立ち膝で進み、後ろに隠れて俯いているアヤメの少し前に改めて座った。夜道ではない場所で見るアヤメの姿は、雨に濡れた花のように華奢で小さく項垂れていた。しかし髪の間から覗く顔はひどく整っており、頬に僅かに朱がさしていた。透の目の前にいるのは影法師などではなく、小さく震えながら己を守っている一人の女の人の姿だった。
 透は手を差し出した。あの時感じた緊張はなかった。
 おずおずとアヤメは差し出された手を見つめた。あの時と同じでありながら多くのものが変わっていた。アヤメが顔をあげると、優しい微笑と出会った。色のない細くて冷たい手が、温かい小さな手に触れるまで、そう時間はかからなかった。






 間違いだらけのはじまりでした。はじめまして、こんにちは
 あなたのこと、もっとよくきかせて
 あたらしいともだちになりたいから




作品名:アヤカシ模様 作家名:ヨル