アヤカシ模様
影法師―――そうあだ名をつけられていた。
村から隣山に繋がる唯一の細い急勾配を抜けて、森の中に入ったその先。開けた場所に悠然と構える高齢の大樹の傍に、姿を見せるらしい。
夕暮れ時から夜にかけての時間。辺りを侵食し始めた闇に紛れるようにしてソレはいる。
夜と同化しそうなその姿に、見た人は眼を疑い、眼を擦ったあとにもう一度元の場所を見るが、その妖しげな姿はどこにも見当たらない。しかし妖を見た者たちは口を揃えていう。
いや、それは確かにいた筈だ。姿はまるで影のようだったが、鈍くけぶる月光色の長い髪が風にたなびいていたのだから。
村から隣山に繋がる唯一の細い急勾配を抜けて、森の中に入ったその先。開けた場所に悠然と構える高齢の大樹の傍に、姿を見せるらしい。
夕暮れ時から夜にかけての時間。辺りを侵食し始めた闇に紛れるようにしてソレはいる。
夜と同化しそうなその姿に、見た人は眼を疑い、眼を擦ったあとにもう一度元の場所を見るが、その妖しげな姿はどこにも見当たらない。しかし妖を見た者たちは口を揃えていう。
いや、それは確かにいた筈だ。姿はまるで影のようだったが、鈍くけぶる月光色の長い髪が風にたなびいていたのだから。