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里海いなみ
里海いなみ
novelistID. 18142
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子供は大人に恋をする

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おはよう


僕の朝のお仕事は、浅田さんを起こす事です。浅田さんはサラリーマンなのにお寝坊さんなので、僕は毎日教えてもらった時間通りに浅田さんの体をゆさゆさします。
でも浅田さんはたくさんゆさゆさしてもなかなか起きてくれません。僕はこういう時、困ります。浅田さんが起きてくれないと、僕の朝ごはんもなくなっちゃうからです。
朝ごはんが食べられないのは困るので、一生懸命ゆさゆさしました。うぅん、って唸る声! もうちょっと頑張ったら、起きてくれる合図です。僕はもっとゆさゆさしました。

「浅田さん、朝ですよー」

ゆさゆさ。

「あーさーだーさーん」

ゆさゆさゆさゆさ。

「ん……わかった、起きる、起きるよ」

そう言うと浅田さんはやっと体を起こして僕の頭をなでなでしてくれました。朝ごはんが食べられないのが困るより、僕は浅田さんになでなでしてもらうのが何より好きです。えへへ、って笑ってたらわきの下に手を入れられて体がふわって宙に浮きました。そのまま浅田さんのお膝に乗せてもらって、ぎゅうーってしてもらいます。浅田さんは起きたばかりなので、僕よりずっとずっと熱かったです。
ずっとこうしていたいけれど、あんまりしてると浅田さんが会社に遅刻しちゃうからダメです。浅田さんから離れて、僕はじーっと顔を見つめました。お腹空きました、の合図です。浅田さんはすぐわかってくれて、僕の頭に手を置いてちょっとだけ撫でた後「ご飯にしようか」と言ってくれました。僕は「あい!」って元気よく返事しました。
ベッドから下りた浅田さんはパジャマじゃなくてジーンズだけを履いています。パジャマは体が痒くなるから嫌いなんだそうです。でも僕は寒いので浅田さんの真っ白なシャツと短いズボンを履いて寝ています。浅田さんのシャツは大きいので、ちょっとしたワンピースみたいです。女の子みたいで恥ずかしいけれど、浅田さんが似合ってるって言ってくれたからずっとこの格好です。
裸足でキッチンまで向かう浅田さんの背中は綺麗な筋肉がしっかりついていて広くて、大きいです。一緒にお風呂入った時には洗うのがとても大変です。でも僕はその背中が大好きなので、走って追いかけました。背中に飛び乗ったら「うっ」ってなって浅田さんのお腰が大変な事になるので、しません。本当はしたいっていうのは内緒です。

「浅田さん、お手伝いします」
「ならコップを二つ出してくれるかい?」
「あい!」

浅田さんのコップは黒くて大きなマグカップです。僕のコップは透明で小さいコップです。浅田さんは毎朝コーヒーを飲むのが日課だそうですが、僕はコーヒーが苦くて飲めないので毎朝ミルクを飲んでいます。お口の周りに白いおひげみたいにならないように飲むのは、まだちょっと難しいです。大きな冷蔵庫から自分用にミルクを取り出した後また浅田さんに近付きます。浅田さんはフライパンで卵とベーコンを焼いていました。僕は端がカリカリになったベーコンが好きなので、浅田さんは毎日カリカリにしてくれます。食パンを焼いていない事に気付いたので袋を見せると、頭をくしゃって撫でられました。

「今日はマコに焼いてもらおうか」
「あい、僕頑張ります!」

パンを焼くのを任されたのは初めてなので、ドキドキします。いつも浅田さんがやるみたいに二枚の食パンをトースターの切り込みに入れて黒いレバーみたいなのを下に下げます。ジジジジジジ……っていう小さな音が焼けてる証拠なんだよって前に教えてもらったのを思い出しました。
どうしてこの機械に食パンを入れるだけで焼けるのか不思議で、一度指を入れようとしたら浅田さんに叱られました。でもその後「怪我がなくてよかった」って抱き締めてもらったので、僕はもう指を入れない事に決めました。浅田さんの悲しそうな顔は見たくないからです。
僕がトースターを見つめている間に目玉焼きとカリカリベーコンは出来上がったようで、コーヒーの苦い匂いと一緒に美味しそうな匂いが漂ってきました。やっぱりコーヒーの匂いは苦手なのでしゃがんで浅田さんの足に顔を押し付けたら、軽く頭を叩かれました。何するんですかって言おうとしたらトースターが鳴ったので、僕は何も言えませんでした。

「マコ、今日は好きなだけジャムを塗ってもいいよ」
「ほんとですか!?」

いつもは虫歯になるから少しだけって言われいてる僕はとても嬉しくなって、急いで椅子に座りました。焼けて熱いパンは僕では触れないので、浅田さんがお皿に置いてくれました。たっぷりのバターとイチゴジャムを塗って、僕は準備万端です。テーブルに手をついて向かいの浅田さんに顔を近付けました。

「おはようございます」
「おはよう」

朝の挨拶は、ちゅうです。