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サクラテツ
サクラテツ
novelistID. 18216
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能無し堂へようこそ

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「お前の頭が、丁度いい位置にあるから悪いんだ」
「ちょっとやめなよ。お姉ちゃんかわいそうじゃん」
和葉ちゃんは言葉とは裏腹に笑っています
「今日のところはこれくらいにしといてやるか」
ハル君が私の頭から手を離しました
私はこめかみの辺りを撫でて、恨めしそうにハル君を見ました
「そんなに痛かったか?」
ハル君は心配そうな顔になって聞いてきました
「痛かったです、顔の形が変わるかと思いました」
「レンは丸顔だから、少しくらい伸びた方が可愛くなるかもな」
私はハル君の肩に力を込めてパンチをお見舞いしました
ですが、ハル君は特に痛がったりせず
「そんじゃまた来るわ、半年後に」
と言って、そそくさと病室を出て行きました
「ちょっと見送ってきますね」
和葉ちゃんにそう言うと、私はハル君の後を追いました
男の子の歩幅は、チビの私よりも遥かに大きいようで、追いつくのには一苦労でした
「ハル君!」
「うん?」
ハル君が肩越しに振り返ります
「今日はありがとうございました」
「何が?」
「和葉ちゃんのお見舞いに来てくれたことです。和葉ちゃんも楽しかったみたいで、私も嬉しいです」
「ああ。別に幼馴染なんだし大したことじゃねえよ。それに……」
「それに?」
ハル君は鼻を掻いた後、前を向いて、
「たまには来いって言われたからな」
と言って、スタコラと歩いていってしまいました
私が昨日、ハル君の背中に向かっていったことはどうやら聞こえていたようです
「ハル君ありがとうございます!」
私は、ハル君の背中にもう一度お礼を言って病室へ戻りました

「お姉ちゃん、ハル呼ぶなら事前に言ってよ~」
病室に戻った私への和葉ちゃんの第一声がそれでした
「ゴメンなさい和葉ちゃん。でもハル君が来ると何か嫌なことでもあるのですか?」
私の目には和葉ちゃんとハル君は、それはもう楽しくお話しているように映りました
「いや、嫌とかじゃなくて、なんていうかその~……」
珍しく、和葉ちゃんが言葉に詰まっています
「それに、ハル君は今日突然付いてくるって言い出したのであって、完全に不可抗力だったのですよ~」
「ふ~ん、もしかして急にあたしに会いたくなったとか?」
和葉ちゃんが身を乗り出してきました
「き、きっとそうじゃないですかね?」
何となく、私がお願いしたから来てくれたというのは言わない方がいい気がしました
「そっか、そうよね?まあ幼馴染だしね。むしろちょくちょく会いに来る方が当然よね~」
和葉ちゃんはニコニコしながら言いました。
作品名:能無し堂へようこそ 作家名:サクラテツ