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ロックンロールは巻き寿司じゃねえ!!

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「何だそれ?」
何かの入った小さな袋を警官は摘み、
「これも奥様の持ち物ですか?」
「何それ?何が入ってんの?」
「とぼけなさんな。これは大麻の樹脂です。これも奥様の持ち物なんですかねえ?」
何だそれ。そんな物、見た覚えがねえ。もしや非合法の物なら困る。炎天下ながら背筋が凍り付きそうだ。
「正直に言いなさい。隠し立てしても後々損をするだけだぞ」
そういうと尋問をする警官は相方を近くに呼びつけて、調書を取らせ始めた。
「え~、十四時〇五分。なかよし公園。大麻樹脂所持。」
それから俺に向き直って、
「え~、名前は?住所は?連絡先は?仕事はしてんのか?え?おい」
「名前はサオトメヒカル。住所はないです。連絡先もないです。仕事はしてません」
「お前嫁がいるといっていたじゃないか。一緒に暮らしてるんじゃないのか?ああ?」
またこいつは俺を指差す。余程まともな教育を受けてないらしい。チキショーメ、見下しやがって。いつか絶対腹いせしてやる。
「嫁はいません。嘘です」
「じゃあこのバックはお前の物か?応えろ」
「このバックは、このバックは、その…」
「何だ?誰のなんだ。お前の物じゃないな」
「そ、そうです。盗んだ物です」
「大麻樹脂所持に窃盗か。いずれも現行犯でない限り罪ではないが、とりあえず署まで同行してもらうか。どこから盗って来た物か、詳しく聞かせてもらおう。いいな」
「はい」
目の前が眩む。空腹もとっくに度を越した。

「あの、聞いてもいいですか?」
「何だ?トイレなら署にもあるぞ。ベタな逃げ方するなよ。何だ?」
「署に着いたら、カツ丼、食えますか?」
「はあ?お前ドラマの見過ぎだ。食堂じゃねえんだぞ。まずは調書の始末が先だ。きっちり話を聞かせてくれりゃあ、何か食わしてやるよ」
「そうですか。じゃあ泊めてもらえるんですか?」
「は?お前何を言ってるんだ。隠し立てすると留置所に泊まる事になるが、調書が取れれば帰ってもらうぞ」
「そうですか」

俺は一体どうなってしまうんだ。少し真面目に働かなかっただけじゃないか。何だってこんなことになってしまったんだろう。情けない。情けなくて涙が出る。1つ吐いた溜息と一緒に涙がどっと出て来た。喉が渇いて死にそうなのに、涙に暮れてる場合か。止まれ、涙。無駄に水分使ったら死んじまうだろ。こんなんでもまだ死にたくねえ。こんなんでも生きていたいよ。

「涙流すくらいなら、こんな事するんじゃねえよ。とりあえずパトに乗れよ」
警官は俺の肩をつかんで車に促した。

泣きたいのはそんな理由じゃねえ。車に乗る間際、俺の目尻に、笑顔で見送るあいつが映った。あんな笑顔、見たことないんだぞ。可愛いじゃねえか、チキショー。