アホ毛シリーズ:深夜徘徊
こちらに懐中電灯を向けたまま補導員は足早だった足の早さを更に上げ、逃すものかと言うように走り出し何か、此方に向けて叫んでいる。どうせ、こら!逃げるんじゃないっだとか、お前たちどこの学校だ、とかそんなことに違いないと二人は耳を傾けずに暢気にも呟いて結論を弾きだし、足先を公園の出口に向けた。その先には補導員の姿があるのだが二人は足先の向きを変えず真っ直ぐそちらへと向かっていく。歩きが早足に、早足が駆け足になったかと思えば、驚愕の表情を浮かべた補導員の真横をすり抜けて出口を飛び出した。
「お仕事お疲れ様ァ」
「バッカきーち」
軽口を叩くことも忘れない貴壱をたしなめながらも、何やかや叫び続けている補導員を無視して二人は夜の闇に溶けた。
作品名:アホ毛シリーズ:深夜徘徊 作家名:里海いなみ