朧木君の非日常生活(11)
声を押し殺して、全ての感情を押し殺して泣いているような声。
いや、『声』という声ではない。
声と言うよりは感情。感情が直接頭の中に流れて来るような感覚だ。
寂しさ。
憎悪。
怒り。
疑問。
全ての感情を混ぜたような感じだ。
「か、蜻蛉さん・・・・・・これって・・・・・・」
「ここの民家に何かあるのは間違いない」
そう、間違いないんだ。何があるのか、なんて今のところ仮定すらも上げることが出来ない。予想もつかない。
だからこそ、恐い。
根本的な部分に訴えかけてくる感情。夜道が『怖い』というものとは似て非なる感情。
未知への恐怖だ。
「どうする、蜻蛉さん」
「どうするも何も、行くしかないだろうね」
そうだよな・・・・・・。
だって、まだ『何か』の感情の奔流は続いている。
続いているんだから。
「行くよ、朧木くん」
蜻蛉さんが、そう言い一歩踏み出した、瞬間。
━━消えた。
作品名:朧木君の非日常生活(11) 作家名:たし