CROSS 第6話 『死守』
塹壕にいた兵士たちは、次々と塹壕の中に設置されている退避所の中に入っていった。退避所といってもただ穴を掘って、ドアを付けただけのしろものだが、たくさんあるため、十分なスペースがある。山口や佐世保たち下士官は、退避所の入口に立って隊員たちを誘導していた。
半分ほど退避所に入ったとき、敵モビルスーツのマシンガンの空になったバナナ型マガジンが地面に落ちる音がした。山口が慎重に塹壕の中からのぞいて見てみると、敵モビルスーツがマシンガンを塹壕に向けていた……。
「いそげ!!!」
山口が叫んだ瞬間、マシンガンが火を吹いた。マシンガンから出た弾は塹壕に直撃し、中に入ってきた弾が、退避所の前で並んでいた隊員たちを襲った。弾に当たった隊員は、頭や手足が血を撒き散らしながら飛んだり、当たったところが破裂したりした。山口たちは死角に回り込む。
パニックになった隊員たちが、退避所に入ろうと入口に殺到した。
またマシンガンが火を吹き、発射された弾がさらに犠牲者を増やしていく。入口に殺到していた隊員たちにも当たり、入口に肉団子を作った……。それがさらに隊員たちをパニックにさせた。山口たちはその光景を、死角から呆然として見ていた。
「突撃−!!! モビルスーツにつづけ−!!!」
山口が塹壕から慎重にのぞいて見てみると、モビルスーツの後方から、たくさんの兵士たちが突撃してくるのが見えた。見てしまったことを後悔する彼。
「山口さん、隊員の避難が終わりました!」
ウィルの声が聞こえてきた。
「オレはここで敵を食い止めるから、中に入ってろ」
「何かっこつけたことを言ってるんですか!?」
椿の声が後ろから聞こえてきた。
「オレも残りますよ」
「しょうがないから私も!」
ガリアと佐世保が退避所の金属製のドアを閉めながら言った。中の隊員が「え?」という表情で山口たちを見ていた。
そのとき、再びマシンガンの音がし、弾が飛んできた。幸いにも、今回は誰にも当たらなかった。
「……なんかよくある展開だな」
「細かいことはいいじゃないですか!」
敵モビルスーツはゆっくりと塹壕に向かって歩いてきた。地面は自分たちの仲間の死体があちこちに転がっているので、敵モビルスーツは歩きづらそうだった。そのモビルスーツの背後からは、敵兵たちが突撃してくる。
ゆっくり歩く敵モビルスーツを追い越してきた敵兵から、山口たちはうまく隠れながら撃退していった。椿は塹壕の中に敵兵が入りこんでないか見回っていた。
「山口! モビルスーツはどうするんです?」
ガリアが銃剣を突き出しながら猛ダッシュで突撃してきた敵兵を撃ち殺してから山口に聞いた。
作品名:CROSS 第6話 『死守』 作家名:やまさん