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CROSS 第6話 『死守』

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第3章 大きな刺客



 塹壕や魔こう炉の近くで次の攻撃に備えている山口たちは、紅茶やコーヒーを飲んだりして眠気と戦っていた。山口が目を閉じる度に、椿が包丁の先でツンツンと刺す……(腰のベルトにだが)。時刻は午前0時を回ったところだった。夜空には、都会では見ることがないほどのたくさんの星が耀いていた。雲一つ無い夜空だ。
「今夜は来ないんじゃないですか?」
ガリアが正面を睨みながら山口に尋ねる。彼は、空薬莢が入りまくっている夕食の缶の中身を地面にぶちまけていた。
「いや、向こうはこれ以上援軍が来るのは困ると思っているだろうから、早く決着をつけようとするだろう」
「そういうものですかね」
「山口少佐、何か来ます!」
山口とガリアの会話に椿が割って入って言った。椿は荒野の向こうの暗闇をじっと睨んでいた。
「何が来るんだい? 何も見えないよ」
ガリアがしっかりと身構えてから言った。その横では、ウィルが守備隊と定時連絡の通信をしていた。
「私にもまだわかんない」
椿は、真剣な目つきで正面を睨んだり耳をすましたりしながら、静かにそう言った。
「聞きちがいじゃないのぉ?」
夜ふかしでハイテンションになってしまっているらしい佐世保中尉が、椿をちゃかした。
「いいえ、違います」
椿は冷たい口調でそう言った。
 しびれを切らしたらしい山口は、再び胸のバッジに触れ、特務艦のブリッジと通信を始めた。

「ヘーゲル、敵の動きは?」
ブリッジでは、ヘーゲルがコクリコクリとしていたが、山口の声で飛び起きた……。
「……すいません、敵の動きですか?」
「ああ、そうだ。変な動きはあるか?」
「そうですね……。今のところレーダーに敵影は見えな……、見えます。大きな敵影が一つ、たった今レーダーに入りました。高速でそちらの塹壕に向かっています」
ヘーゲルのその言葉に、山口はついに来やがったという風に顔を歪ませた。
「ありがとうヘーゲル。これが最後の通信にならないようにがんばるよ!」
「これからもお役に立ちたいですよ」
ヘーゲルは静かにそう答えた。
 山口は通信を終えると、塹壕にいる隊員たちに、
「モビルスーツのお出ましだ!!! このあいだ艦を攻撃したのとは違うが、仕返しのつもりでやってやれ!!!」
そう鼓舞した。
「オー!」
塹壕にいた隊員たちは眠たそうに声を上げた……。
「ウィル、守備隊の連中にも伝えてやってくれ」
「わかりました」
ウィルは再び守備隊と通信を始めた。