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今別府千宵
今別府千宵
novelistID. 15836
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ユメウリオトコ

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誰もいない公園を見渡した。頭にはタケルの髪に触れた自分の手がそのまま、一時停止されていた。私の寒くて赤くなった手が、あの柔らかな髪にふんわりと、触れた。紅葉みたいだった、と頭の隅で思った。でも彼は、紅葉のことなんかに気づいちゃいないんだろう、世界はこんなに真っ赤なのに。彼は自分の夢の中にいつでもどっぷりと浸かり、それを売り、生きている。
「帰るね。本当、ゆっくり休んで」
私はそう行って一歩、二歩、とアパートへの道を歩き始めた。背中にタケルのぼんやりとした視線を感じながら、今日は運が悪いなぁ、等と考えていた。何も言わなければ、声なんてかけなければ、また、タケルの配る夢を買い、何となくわくわくして、生きていかれたかもしれないのに。紅葉が私の頬を掠めた。少しむずかゆかった。その部分をかこうとして、何かが指にまとわりついたことに気が付き、とても惨めな気持ちになった。その時だった。
「真央、そのスカート、あの白いブラウスの方が似合うと思うよ」
後ろで、かすかにそんな声が聞こえた。私に喋り掛けているのか独り言なのかもわからない声。私は一瞬立ち止まったが、またアパートへと歩き出した。なんでこのタイミングでお説教されなければいけないのだ。そう思いながら早歩きで歩いた。しかし、段々とそのテンポは遅くなっていった。タケルにあったのは約半年ぶり。私が私服で人生初の白いブラウスを買ったのは、丁度夏の終わりの秋物セールの時だった。ほんの1ヶ月前のことだ。汚してしまうのが怖くて。今まで手が出せなかったのだが、半額、という言葉に惹かれてつい購入してしまった。いつ見られてた?私の記憶にはない。
私はその時、タケルのリアル、を少し垣間見れたような気がした。部屋の中から窓越しに私を見つめているタケルを想像した。
それが恋愛かどうかはわからないが、少なくともタケルは、去っていく私に言葉を残したのだ。とても回りくどくて、人によっては引くかもしれない。そんな内容だったけれど。
「見てたよ。これからも、そこに居ていいよ」
そんな風にとれてしょうがない。これはまた、私が勝手に夢を買ってしまった線も濃厚だが、ほんの少しだけ、あと少しだけ、このままでいたい。

さらさらとした髪を思い出す。それに触れた左手を見つめる。それは今からでも真っ赤になりそうなほど、熱くなっていた。






作品名:ユメウリオトコ 作家名:今別府千宵