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オルコンデリート(前編)

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「バンドブームって十年周期でやって来ているの、あなたは知ってるわよね?」
取材を取り仕切った向島明日歌が尋ねた。
「言われてみればそうかも」
音楽情報誌のライター、三棚井空男はコーヒーを啜りながら応える。2人はたった今まで、来月新譜をリリースする『ピカンテ』というバンドのインタビューを行って来たところだった。ピカンテはデビューからすでに二十周年を迎える大ベテランのバンドだ。
取材先ではタバコは吸えない。ヘビースモーカーの三棚井も向島。インタビューを終わると、どちらから言うでもなく、ファーストフード店の喫煙席に避難した。
「その十年周期の説でいうと、『ピカンテ』は2世代前になるのかな」
「そうね。十年前のインディーズブームが1つ前でしょ。その前のイカ天・ホコ天世代よね」
「じゃあ、その周期性に従うと、今はブームってことになるんだけど」
「そういうことになるわね」
三棚井も向島も、それぞれ音楽雑誌の編集に関わる仕事をしている。業界の見通しが暗いことは、日々、肌で感じていた。
「その説、怪しいね」
「どうして?今が不景気だから?」
「言うまでもないね。社会情勢を無視すれば、当てはまるかも知れないけど、景気を無視してブームは語れないと思うんだけどな」
「そんなことないでしょ。音楽の発信方法が昔と変わっただけよ。今は個人でも音楽製作出来るし、ネット配信してるアーティスト・ミュージシャンも少なくないわよ。商業のベースに乗らなくなっただけで、ブームと言っても良いんじゃないかしら」
「どうかな。ブームは言い過ぎだと思うけど」
「ところで、どのくらいで出来そうなの?原稿は」
「さあね。やる気次第だね。一日でも出来るし、一週間でも出来るよ」
「じゃあ、一日でお願いよ」