かいごさぶらい<上>お食事&かえりたいねん
私は、母がここに来た経緯を「阪神大震災」から、話さなければならない。何時ものようにゆっくりと一言一言、噛んで含めるように説明するのだが。
「ほんだら、あんたおり~や、わたしは、かえるからっ!」が母の何時もの台詞だ。
「そやからな~、、、、、、、」と、私。前述の繰り返しを、、、、、、。
「あんたーっ、わたしが、あほやおもて、ばかにしてんのんやろー!」と、母も決まって怒りだす。
「そんなことせ~へんよ」これも、何時も私が言う台詞だ。
「してるわー!」
「見てみぃ、もう、お袋ちゃんが、寝るように、お布団も敷いたあるやろ~」と、私は母の居室を指さす。
「あんたねたらえ~ねん、わたし、かえるから!」
「う~ん、、、、、、、、、、」何時もこうなる。
「うそついてるねん、あんたわー!」母の表情が一変する。
「何で、息子の僕が、自分のお母さんに、嘘つかなあかんのん、そんなことせ~へんよ」
「いやっ、あんたわなー、わたしが、あほやおもて、うそゆーてんねん!」
「ほんだら、用意するか~?」これ以上、母を刺激してはならない。私は母の身支度を手伝うことに。
「うん!」と、母が笑顔になる。
「はい、おトイレいってからな!」母をトイレへ、便座に座った母が、私を見据えて。
「で~へん、もうかえろうか?にいちゃん、はよ、かえりたいねん!」不安げな表情だ。
こうなったら、兎に角、一度、家を出るしかない。(マンションを一回りするか、エントランスで、、、と私はあれこれ考えるのだ)。この日はエントランスを一回りして事なきを得た。
「おか~さんやら、みんないてるねん!」かえりたいねん、その(2)
2005/7/14(木) 午前 10:57
某月某日 今日はデイ施設で、入浴のあった日だ。それと、散髪。母はスッキリして帰ってきた。その夜、もう寝る時間に、眠たそうに欠伸をしながら、母が。
「にいちゃん、かえろうか~?」と、ぽつりと言う。
「うん」私は軽く返事する。
「もう、かえろうか!、ゆーてんねん!」
「帰る、って、何処へ~」
「わたしの、いなかやんか!、」(今日は田舎だ)。
「田舎に、誰か居てるん?」
「なにゆ~てんのん、このコはー、いなかに、み~んな、おるやんかー!」(阿呆か!)と言わんばかりの母だ。
「お袋ちゃん、明日な~、学校(デイ施設のこと)やから、今日はここで泊まらなあかんねんで~」と、言ってみた。
「がっこう?いきたない!、かえるっ!」と、キッパリ。
「そやけど、もう、遅いで、お袋ちゃんの田舎は、飛行機やないと行かれへんで」
「ひこうきのったらえ~やんか~」母の言う通りだが、、、。
「お袋ちゃんは、いま、飛行機乗られへんねんで、腰の骨折れてるからな~。腰が治ったら行けるから~」と、詭弁を弄する私。
「おれてへんわー、あんたー!、なんで、そんな、うそいうのっ!」と、見抜かれる。
「嘘、ちゃうで~、ほんまやんか~」諦めの悪い私。
「かえりたいねん、にいちゃん、いときー、わてかえるからっ!」と、母の方が毅然としているのだ。
「誰も、居てへんのに、帰るんか~」私の最後の抵抗(勝った試しはないのだが)。
「いてるわっー、おか~さんやら!みぃ~んないてるねん!」
「分かった、わかった、そんな、怒らんでも、え~やんか~、ほな、服着替えようか」
この後の、結末はご想像あれ。(結果、この日は、また階下のエントランスを一周して来ました)。
「あんた、おっときー、わてかえるからー!」かえりたいねん、その(3)
2005/7/15(金) 午後 0:18
某月某日 姉から久しぶりに電話があった。母は一生懸命お仕事中(ティシュペーパーを箱から一枚一枚丁寧に取り出して、折り畳み積み上げていく作業)だ。
「お袋ちゃん、姉~ちゃんから、電話やけど、出るか~?」と、母に声をかけた。
「いまいそがしいねん、え~わ」と、素っ気ない。
「ちょっと声聞いたらど~や?」久しぶりなので私は母を促してみた。
「あかんねん、これ、せなあかんから、あんたきいときぃ」
「今度な、土曜日に泊まりで来てくれるんやて~」
「ふ~ん、くるのんかー?」全く興味なし。
「お袋ちゃんの、服な~、買うてきてくれるんやて、良かったな~」
「どんなんやー?」作業の手を止めて、母が顔を上げた。
「うん、見てみな分からんけどな、姉~ちゃん、センスえ~から、え~服や思うでぇ」
「そうかな!」
「いま、お袋ちゃんが着てる服も、前に姉~ちゃんが買~て来てくれたやつやで」
「そやったか~」
「あんまり、根詰たらあかんで~、明日、学校(デイ施設)やから、もう止めたらわ~」
「あした、がっこう!、これして、かえらなあかんねんでー!」
「ん、、、、、、、、、」しまった。母の誘導尋問に私は引っかかった。
「今日はな~、仕事して疲れてるやろ、ここで泊まって、明日、帰ろ~や、なっ!」姉の電話どころではなくなってきた。
「なにゆ~てんのん、かえるから、これしてるんやんかー」母のほうが、辻褄が合ってきたのだ。
「そやけど、もう遅いしな、そうしたほうが、え~んちゃうん?」
「あんた、おっときっー、わてかえるからー!」
「う~ん、、、、、、」後は流れのままに、と思う私。母が作業を終えてからの対処になりそうだ。(結果、この日はマンションを出て植え込みで一休みして帰ってきました)。
作品名:かいごさぶらい<上>お食事&かえりたいねん 作家名:かいごさぶらい