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星の示す道

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「それじゃ、関原は進学ってことでいいな」先生の言葉で締めくくられる、私の進路面談。
時計を見ると、3分間行われていたことがわかる。
3分間。短いのかどうかは、正直よくわからない。決定事項の確認だけだったわけだから、長かったくらいかもしれない。
大学への進学。これが、私の進路。とくに反対もされなかったし、迷いぬいて決めたわけでもない。
大人は不思議だ。つくづく思う。自分の道は自分で決めろ、なんて言っておきながら、無難な選択ならまず反対しない。そのくせ、上京してミュージシャンになります、なんて言えば絶対にいい顔しない。よく考えろ、なんて言う。
そういう人ほど、私なんかより真剣に人生かけているのに。
だから、少し羨ましいと思う。でも真似したいとは思わない。しなくていい苦労まではしたくないと思う。
無難な、つまり多くの人が選ぶ道に追随していれば、少なくとも世の中の流れに逆らうことにはならない。
流れに逆らうことは、怖いことだ。たくさんのエネルギーがいる。敵も多い。
以前、駅前で路上ライブをしている人たちをみかけた。歌がうまかったのもあるけど、夢を追う姿というのがかっこよくて、ファンになった。通りかかれば、塾に遅刻しそうでも必ず足を止めた。拍手を送った。
けれど、ある日酔っぱらいにからまれて、弾いていたギターを壊されたのを見た。喧嘩になって、警察の人たちが来た。警官に取り押さえられながら、酔っぱらいのおじさんはずっと叫んでいた。
へたくそ。クズ。現実見ろ。やめちまえ。
それを遠目に見てから、思ったのだ。
夢を追うということは、こういうことなんだって。理不尽な仕打ちを受けて、踏みにじられる。
それなら、私は無難に生きたい。そうすれば、失敗しても、きっと志ある彼らほど傷つかなくていいだろう。
皆が選ぶ道だったから、私もそうした。
そんな予防線を張っておけば、誰かのせいにできる気がするから。
自分の選択を後悔するなんてごめんだ。自分を責めるなんて、したくない。傷つきたくない。
あれ以来、彼らを見かけなくなった。
だから、私の価値観はきっと、正しいのだ。
作品名:星の示す道 作家名:やしろ