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マスクホン少女

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…歌い終わる。
さぁ、決断の時だ。
彼は興奮しているように見えた。
そわそわしていたけど、私は冷静を装った。
本当は私の方が落ち着かないのに。
それでも何か、感情を隠したかった。

「…ありがとう」

彼は言った。
ありがとう?
私に?
むしろその言葉は私が言うべきなんだ。

『改めて聴くと、やっぱり綺麗な声だね』

第一声。
嬉しい。

「…ありがとう」

そんな事しか言えない私。
でも、やっと言えた。

きっかけを与えてくれて、ありがとう。

「やっぱりその声、活かさないともったいないよ…バンド、やらない?君の声が必要なんだ」

あぁ…彼は私の声を必要としてくれる。
ちょっと探せばすぐ見つかりそうな、私の声を。
どこにでもありそうな、私の声を。

「でもそれだったらレコーディングの時だけとかでも良いんじゃない?」

ちょっとした反抗。
どう返ってきても、もう答えは決まってるけど最終確認。

彼は裏切らないか。
私を…友達だと思ってくれるかどうか。

「う〜ん…それって面白い?」
「どうだろう…」
「まぁそれでも良いけどさ…」

…やっぱりそんなもんか。
結局その程度なんだ。
 

『でも、やっぱりせっかくやるんだったら仲間として、バンドで楽しくやっていった方が楽しいと思わない?』

仲間。
…これは友達という解釈で良いのかな?

『それにほら…世界を広げよう!…正直これ言うのも恥ずかしいんだけど…
 せっかくだったらやっぱり何人もいた方が良いと思うんだ』

世界を広げる。
そうだ。
こんなに狭い世界にずっといちゃ駄目だ。

応えよう。

今彼の顔を見るのは恥ずかしい。
少し涙ぐんでるから。
じゃあどうやって意思表示しようか?

下を向いたまま右手を差し出す。
声が出ないように気をつける。

「これ…握手?」

私は頷く。
そうだ。
これから共にやっていく仲間に挨拶をするんだ。
 
彼は握り返してくれた。

「あ…そういえば…遅くなったけど、俺真って言います…よろしく!」
「晶って言います…よろしく」
「よろしく!…泣いてんの?」

…あ…顔上げちゃった。

こうして私は彼のバンドに入った。
作品名:マスクホン少女 作家名:koma