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マスクホン少女

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久々に見た…。
それにしても奇妙な光景だ。
そもそも二人は知り合いだったの?

「言いたい事があるなら直接言いなさいよ」

玲が男子の事を睨んでる。
…こんな所で言い争いしないでよ。
男子が玲と私を交互に見る。

「今、晶がいる前で!」

…え?
私?

「いや、まだ心の準備が…」
「そんな事言ってるから晶はこうなっちゃったんじゃない!」

状況が掴めない。
…え?
告白?
こんな皆がいる前で?
…そんなわけないか。
私の変化…歌わなくなった事かな?
…何でそんな事気付いたの?
…さすが友達。

玲が彼を私に付き出す。
差し出された彼の顔は、何か覚悟を決めたように凛々しく見える。
私は…それを受け止める事にした。
iPodの電源を落とす。
ヘッドホンを外す。
私も真剣な顔で返す…決して睨んではいない。
 
さぁ、来い。

「あの…」
「…何?」

…沈黙が流れる。
玲が少し苛立って男子の背中を叩く。
彼の顔が何だか弱弱しくなってきた。
私も何故か苛立ってきた。

「何よ」
「いや、その…」

玲が我慢できなくなり話し出す。
…こんなに短気な娘だったっけ?

「彼、あなたの事バンドに入れたいらしいよ」
「嫌」
「お願い!」

条件反射の連続だった。
阿吽の呼吸ってこういう事を言うのかな?
…違うか。

「…まぁ話を聞いてよ、晶」
「…何?」

私と玲が見つめあう。
真剣な顔のままだ。

「この一カ月、彼はあなたに会いに行った?」
「いや、来てないよ」
「何で来なかったと思う?」
「…諦めたと思って…」

「違うよ」

そこで彼が話に割って入る。
彼の顔がまた少し凛々しくなった。

「何が違うのよ」
「諦めていない」
「じゃあ何で来なかったのよ」

…これじゃ私がずっと待ってたみたいじゃない。
…まぁ違わないけど。

「私を口説いてたのよ」

玲、衝撃の告白。
…ちょっとびっくり。
でも何かムカついた。
口説いてた?
何だ、こいつ?

多分顔に出たのだろう。
玲がすぐに察した。

「あなたがバンドに入りたいと思う様に説得してくれって」

あぁ、口説くってそっちか。
…ん?
でも一度も説得されてないような…。
何で?

「玲、私に何も言ってこなかったけど?」
「いつか彼が直接行くと思ってたからよ」
「でも来なかったよ?」
「私もびっくりよ」

二人で彼の顔を見る。
彼は彼で少しバツが悪そうな顔をしている。

「とにかくそういう事よ」
「うん」
「それで晶、どうすんの?」
「…」

悩んでる。
正直…入っても良い。

「あ、あと」
「…何?」
「まだメンバー、彼しかいないみたいだから」
「は?」

 …大丈夫なのか?

「でも大丈夫だよ」
「…何が?」
「私もそのバンドに入るから」
「…は?」
「あんたが入るならね」
「何で?」
「…まぁ良いじゃないの」

意外…そもそも玲って楽器とか出来たの?

「それで、どうすんの?」
「どうするって…」

彼を見る。
真剣な目でこちらを見ている。

「ねぇ、世界を広げようよ」

彼が言った。
いつだか玲が似たような事を言っていた。
覚えている。
私もそう思う。
世界を広げたい。
私の世界を。

「彼と話していてわかった」
「何が?」
「晶、そのマスクとヘッドホン、外しなよ」
「何で?」
「わかってるんでしょ?自分で周りと壁を作ってるのを」

凄い。
彼女は、玲はしっかりわかっていた。

私を友達だと思ってくれているからこそだと思う。

九割、心が傾いている。
沈黙が流れる。
でも残りの一割がどうしても邪魔をする。

恐怖心。

『明日、声を聴きに行くから』

私が一人で葛藤している中、そう言って男子は立ち去った。
…何て勝手なんだろう。

明日、決まる。
私のこれからが。
作品名:マスクホン少女 作家名:koma