マスクホン少女
―土手―
昼休み。
この場所にもう私は来ない。
―中庭―
いつもの場所に私は戻った。
この場所で昼食をとる。
大分前と変わらない。
ヘッドホンを着けて音楽だって聴く。
ただ、一つだけ変わった事がある。
歌わなくなった。
この一カ月の間、私は歌い続けた。
歌うのが好きだから。
理由はそれだけじゃない。
自分がいる場所を伝えたかった。
あの男子に。
私はここだよと。
でも今は自分の事を探す人もいないし、声も聞かれたくない。
だから歌うのを止めた。
歌わないのは気分が悪い。
ストレス解消出来ない。
ストレスの原因はいろいろあるけど。
―教室―
お弁当を食べ終わってすぐに戻った。
席に着くなり突っ伏す。
頭を下げる瞬間、玲が誰かと話をしてるのが見えた。
何となく見た事のあるシルエットだった気がする。
…まぁいっか。
あ〜…何で食後ってこんなに気持ちいいんだろう?
…牛になっちゃうかも。
「………」
…誰かが私に声をかけてる気がする。
『!』
『!』
二人?
何で?
誰?
一人は玲だと思う。
じゃあもう一人は?
顔を上げる。
横を見る。
そこにはその場をすぐにでも逃げ去ろうとしているあの男子と、その男子の袖を必死で離そうとしない玲がいた。
「…あ」
「…やぁ」