マスクホン少女
それから数日経った。
私は待ち続けた。
とりあえず名前を聞こうと思った。
話にならないかもしれないけど話をしようと思った。
人とあまり関わりを持とうとしなかった私。
私にしては頑張った方だと思う。
バンドの事も日が経つにつれ考えるようになった。
もともと歌うのは好きだった。
あの事が無かったら今もバリバリ歌ってたと思うし。
あと数回押されてたら引き受けてたと思う。
でもやっぱり問題もあるわけで。
『声を出してそれを相手に聴かせる』
メインがそれのボーカルは、自分にとってかなりハードルが高かった。
歌うのは好き。
でも声は聞かれたくない。
でも怖いという気持ちの方が大きい。
でも歌いたいという気持ちが無いわけじゃない。
結局同じ所をぐるぐる回って、葛藤する。
一ヶ月後。
彼は来なかった。
この一カ月ずっと待ち続けた。
だけどやっぱり来なかった。
私は確信した。
『彼も口先だけの男なのだ』
と。