有馬琳伍氏の悲劇、もしくは24人の客
XYZ氏の終幕と開幕
夜が来る。夜が来る。夜が来りて、開幕する。生贄は有馬琳伍氏。すでに、有馬氏には特別製の飲み物を飲ませてある。そして、赤い月が天に上がるのを待つ。部屋には二十四人の夜会服を着た紳士。手には、ナイフとフォークを持って、食事会が始まるのを今か今かと待っている。口ずさむは、何かの呪文か。呪文が最高潮になった、その時。有馬氏がのけぞり、口が大きく開いた。有馬氏の口から、手が這い出していた。手は有馬氏の口から、紙でも破るかのようにびりびり二つにと裂けた。噴出す血と、飛び散る肉片。スプラッターである。有馬氏の残骸の上には、青年が一人立っていた。赤い目に黒い髪の美青年。美青年は見るものを魅了するような陰惨な微笑を浮かべた。紳士達の主の復活。
美青年の足元では料理人が、有馬氏の残骸を集めて調理場に持っていく。料理人は、見事な手さばきで有馬氏の残骸で作ったパイを運んできた。そして、有馬氏の残骸入りのパイは紳士達で美味しく食われたのであった。これを腹が減っては戦ができないとでも言うのだろうか。二十四人の紳士に切り刻まれて喰われた、A・アップルパイ氏の悲劇的な最期。ここに、悪の秘密結社は復活したのであった。そして、閼伽無市にまた怪奇がひとつ増えたのである。
作品名:有馬琳伍氏の悲劇、もしくは24人の客 作家名:ツカノアラシ@万恒河沙