朧木君の非日常生活(9)
「それでそれでー? 朧木くん本当に、その村に行ったの?」
鬼火ちゃんが、興味深々です! と言わんばかりに詰め寄ってきた。
「行ったよー。本当に嫌々だったけどね」
個人的に、あの当時の俺に拍手喝采、金メダルを贈りたいよ、本当に。
「朧木くんは、おしっこを漏らしちゃうくらい恐がっていたからね。実に滑稽だったよ」
「漏らしてねぇよ!」
いい加減なこと言うな。
鬼火ちゃんの前でくらい、カッコイイ朧木くんで居させてくれてもいいじゃないか。
目的地までは、まだ時間がある。
「鬼火ちゃん、続き聞きたい?」
「聞きたい!」
しょうがないな。
一つ一つ思い出しながら、ゆっくりと話そうかな。
時間も結構あるし。
蜻蛉さんも、物思いに耽っているようだし。
もしかしたら、俺の話をこっそり聞いて色々と思いだしているのかもしれない。
有り得るな、この人だったら。
俺はそう思い至った。
作品名:朧木君の非日常生活(9) 作家名:たし