影の世界
「じゃ、進めよう。その3、瞳術を使えるようになる」
「瞳術って父さんが使ってたやつかなぁ」
「そうだと思うぜ。王は吸血鬼にも瞳術が使えるからな」
ん? とディーが首を傾げる。
「じゃ、普通は吸血鬼に対して瞳術って使えないの?」
「あぁ、人間とか犬とかには使えるけど……とにかく吸血鬼には無理だな。
王だけの力ってやつ」
「へぇ、王だけの力、なんだ」
「まぁ王だしな。王は俺たち吸血鬼の頂点に立つ存在だから。……んじゃ次
進むぞ。次は言霊を使えるようになること、だ」
ディーは少し考え込むと、昨日聞いた父の不思議な響きを持つ言葉
を思い浮かべた。
「あれかー」
「そうそれ。あれも王だから皆に使えたんだ。で、最後は人間を吸血鬼にすること」
ディーは怪訝そうな顔をする。いまいち理解出来ていないようだ。
「そんなことができるの?」
「まぁ、やってみたらわかる。逆に言えばやらないとわからないな、これは」
「う……難しそうだね」
「大丈夫さ。なんとかなる」
ライアスの根拠はないが力強い励ましにディーは微笑む。
「そういえば、ライアスのコウモリってどんな子なの?
見せて、欲しいな」
好奇心に眼を輝かせてディーは言った。
「まぁ、いいけど」
ライアスが手のひらに描いてある胡桃のような形をした紋章に向かって
何やら唱えると、
「きゃっ」
『つづく』