アオイホノオ―終末戦争―
そのまま噛み付かれると思った瞬間。素早く身体を横に動かし、相手の口の横辺りの甲殻を掴み、そのままの勢いで背中に飛び乗り、ナイフを怪物の首元へと突き刺すと大きく引いた。
怪物は声にもならない悲鳴を上げながら首元から血を噴出し、口から血の泡を噴き出す。
しばらくすると怪物は力なくその場に倒れこむ。
「小物は今ので全部だな。後は……」
鷹野はナイフに付いた黄色い血糊を払うと腰の鞘へとしまう。
二人は頭上の木々を見上げる。木々の合間から大型個体が二人を見つめていた。
既に大型の背中のプラズマ砲はこちらに向けられチャージが行われている。
そして放たれようとした瞬間だった。
爆音。
悲鳴とともに脚の辺りから血飛沫と煙を噴き出しながら大型は倒れた。
『待たせたな二人とも!』
若干、ノイズが混じっているがガルシアの声と判別できる。更に複数の爆音と大型の悲鳴のような咆哮が聞こえる。
二人は大型へと走り出す。不意打ちを食らった大型は脚を破壊され、地面に前のめりの形で倒れこみ立てないでいる。その二人の前に触手が立ちはだかる。
「何っ!?」
優と鷹野は触手に絡みつかれるがなんとか触手を抜けた鷹野が先行する。
また大型の身体から生えた触手が本体への道を阻む。
「このクソがぁ!!」
本体に近づかせまいと絡んでくる触手に苦戦する鷹野。
「たああっ!!」
気合とともに触手が次々と切り落とされていった。
触手と鷹野の間に陽菜のパワードスーツが立っている。
「私に任せて先に行って鷹野!」
近づいてくる触手を切り落としながら陽菜は叫ぶ。無言で頷くと鷹野は本体への道を進んでいく。
更に鷹野の目の前に飛行型個体が二匹現れるが遠距離からの狙撃により直ぐに叩き落とされる。トリスのやつ余計な事を、と思いつつも前へと進む。
そして本体へと到達した鷹野は大型の顔の前に立つ。
忌々しそうに怪物はこちらを睨みつけると大きな咆哮。
凄まじい風圧が鷹野を襲うが身じろぎ一つしない。手持ちのショットガンをグレネードランチャーへと持ち返るとそれを右手で構える。
狙いは相手の大きな口内。鷹野はそのままトリガーを引いた。
大型は口の中へと入った異物を取り除こうとするが無駄だ。
怪物は体内から大きく爆発して砕け散る。
爆発が大きいのはプラズマ用のエネルギーが溜められている器官が反応を起こしたからなのだろう。
蒼い炎と黄色い血の雨が降り注ぐ中、鷹野は立っていた。
振り向くとそこにはガルシア、トリス、陽菜、優の4人。鷹野は自然と自分の頬が緩んでいくのを感じる。
もう一度仲間を信じてみようと思った。
―――大切な仲間を失わないように……
作品名:アオイホノオ―終末戦争― 作家名:ますら・お