冒険倶楽部活動ファイル
私達は走って七夕の日に行ったあの場所へ向かった。
丁度太陽が水平線の彼方に沈もうとしている時だった。
「ここまでなら…… 来ないよね……」
「う、うん…… はぁ……」
私は借り物の服が汚れないように冒険ポーチの中からハンカチを取り出して芝生の上に置くとその場にしゃがみ込んだ。
「結局羽須美の奴、何がしたかったんだ?」
秀君もしゃがみ込んで額の汗を拭う、
私は息を整えると真実を話した。
「あのね、実は……」
私は自分がサイトで小説を書きスランプになってる事、それを相談した羽須美ちゃんと舞加奈ちゃんが勝手にはしゃぎ出した事も全て話した。
「何だ。そうだったのか……」
「ごめんなさい、私のせいで……」
「何言ってんだよ、悪いのは面白おかしくした羽須美達だろ?」
「で、でも……」
それでも私にも責任がある、
電話でも何でも話す時間はあった。
ちゃんと話して置けば良かったって事を後悔した。
まともに秀君の顔を見る事が出来なかった。
「まぁ、そう言う事なら正直に言ってくれれば協力したけど…… 結構楽しかったよ、君と一緒にいるの」
「えっ?」
「楽しくなかったの?」
「そ、そんな事無いよ、私も凄く楽しかった」
私は頷いた。
「あ、そうだ。忘れてた……」
すると秀君は冒険ポーチの中から長方形の小箱を取り出して私の前に差し出した。
白と赤の包装紙に包まれ緑のリボンが結ばれている。
「はい」
「わ、私に?」
私はリボンを解き、包装紙を外して現れた小箱を開くとそこには一本の万年筆があった。
「これって……」
「誕生日おめでとう」
「……はぁ?」
私は首を傾げた。
途端私達の間に冷たい空気が流れた。
「えっ? 違ったの?」
「うん、私の誕生日4月だから……」
「そ、そうなんだ……」
何でもこの前羽須美ちゃんが言った、
『年に一度の織姫と彦星』
この部分を私の誕生日だと誤解してしまったらしい、
「で、でも凄く嬉しいよ、秀君…… あれ?」
いつの間にか呼び方が『秀君』になっていた。
「何だよほのか、もう良いはずじゃ…… あっ?」
私達は目を見詰め合うとやがて噴出して笑った。
「あははっ、すっかり映っちゃったね。」
「うん、本当……」
「もうこのままでいいか、ほのか」
「うん、秀君…… それとありがとう、これ大切にするね」
私は手を差し出すと秀君も私の手を握った。
今日この日から私達は下の名前で呼ぶようになった。
最初は恥ずかしかったけど凄く嬉しかった。
作品名:冒険倶楽部活動ファイル 作家名:kazuyuki