冒険倶楽部活動ファイル
翌日、私達が神社にくるとすでにシゲさんが待っていた。
横にはバケツに布を被せてその周りを紐で縛ってある。
「よく来たな。じゃあお宝をお見せしよう」
シゲさんが宝箱(お菓子の箱)の蓋を開けるとそこにあったのは鉛の駒だった。どうりで重かった訳だった。
「これが宝物?」
「ってか何これ?」
私は見た事がある、確かベーゴマとか言うやつだった。
「べーごま?」
「ってか大判小判がザックザクじゃないのぉ〜?」
「花咲か爺さんか?」
するとシゲさんは声を上げて笑い出した。
「それは残念だったな。でもこれはワシ達にとっては大事な宝物なんじゃ」
「シゲさん『達』?」
シゲさんは話した。
実はシゲさんと十波君のお爺さんは幼い頃ベーゴマを片手に島中を駆け回り他の子供達と勝負をしたと言う。
たった2人で負け無しの伝説を作ったと言うのだ。このベーゴマはその戦利品で年をとるに連れてあまり遊べなくなり十波君のお爺さんと一緒にここに埋めてあの暗号を書いたのだと言う、ようするに宝物はタイムカプセルだった。
「でも何で暗号なんですか?」
私が訪ねる。すると普通に地図を作ったら面白くないと十波君のお祖父さんが言ったので暗号文にしたのだと言う。
「へぇ、そうなんだ……」
「ああ、昔は早苗さんと3人でよく遊んだな……」
「さなえさん?」
「僕のお祖母ちゃんだ」
つまりシゲさんと十波君のお爺さんとお婆さんは幼馴染で島中を回ったと言う事になる。まるで今の私達みたいに……
「さてと、じゃあ約束どおりこれは皆にあげよう」
「え、ええと……」
私達は迷った。
貰ってもどう使って言いか分からなかった。
「そうか、じゃあ使い方を教えよう。準備もしておいたしな」
シゲさんはベーゴマを1つ取ると持ってた結び目を付けた紐を尖った方を巻きつけて行思い切りバケツに向けて放り投げた。
するとベーゴマは布の上をグルグル回転し始めた。
「うおっ、すげぇ!」
「まだまだ!」
シゲさんはもう1つ駒を回すと2つの駒が回転しながらぶつかり合い鈍い金属音の放った。
「この土台から落ちた方が負け、そして勝った方は負けた方のベーゴマを貰えるって言うルールだ」
シゲさんがルールを説明しているとそこへお客さんがやってきた。
その人は酒屋さんの旦那さんだった。
お神酒用のお酒をもって来てくれたみたいだった。
「おや、シゲさん懐かしい物やってるねぇ」
「武蔵さん。この子達が見つけてくれたんだ…… あ、そうだ。武蔵さんもやるかい?」
「え、ああ…… そうだな。じゃあちょっとだけ」
すると酒屋さんは前掛けを取ってベーゴマを手に取った。
「よ〜し、今度こそ負けないからなシゲさん」
「ふふ、かかってきなさい」
それから三十分後、
「よし、そこだ!」
「行け! 負けるなッ!」
柊神社にたくさんの人達が集まっていた。みんな大人の男の人でベーゴマ勝負に熱中していた。みんなこの神社の前を通りかかった人達で、ベーゴマ勝負をしているのを見かけて勝負に参加したのだった。
「何か、俺達より熱入ってね?」
「いいのかなぁ、仕事あるのに……」
「みんな子供みたい〜」
舞加奈ちゃんの言うとおりだった。
もはや仕事も私達もそっちの気状態だった。私達はジュースを飲みながら見ていると……
「いいじゃんか、シゲさん達にとっては宝物だよ」
十波君はポケットの中から貰ったベーゴマを取り出した。
「みんな子供だったって事だよ」
十波君が言った。
「そうだね。私達もいつかはこうなるのかなぁ?」
「さぁね、でもそうなるといいなぁ」
いずれ大人になる私達、この関係が何時までも続けばいいなと十波君と肩を並べながら笑いあった。
作品名:冒険倶楽部活動ファイル 作家名:kazuyuki