朧木君の非日常生活(8)
「気づいたみたいだね、朧木くん。 そう、離魂病患者は自分が離魂病だということに気づかない。あくまで予想だけど体がだるい、うまく動かない、頭がぼーっとする、感情が極端になる、と言った症状が現れるはずさ」
蜻蛉さんは次々と確信へ迫った。
「それで何が目的か分からないけど、ここを歩いているか何かしらしている時に・・・・・・事故にあった。そこにある花がその証拠さ」
そう、俺が見つけたのも寂しそうに置かれた花。
道路沿いに寂しくある花。
「蜘戒さん、事故にあった直後あなたは自分自身の魂を見たんだね? そしてその時は自分が死んだことには気づいていなかった」
ここまで話した蜻蛉さんは何処か悲しそうな顔をしていた。
同情なんかじゃない、心から込み上げてくる感情が現れていた。
「離魂病・・・・・・離れた魂が一つに戻らないと成仏は出来ないからね。死を与えられ、実感したあなたは、そう直感し、僕のところに来たんだろう? 違うかい?」
そう問われた蜘戒さんは。
俯いていた。
けど分かる。
泣いているのが、分かる。
喜劇でも悲劇の涙でもなく、純粋な涙を流している。
「・・・・・・・・・・・・ありがとうございます」
蜘戒さんはそう言った。
解決策なんて見出していない俺たちにそう言った。
でも、今の俺なら分かる。
蜻蛉さんもその意味は分かっているだろう。
けど、口ではテキトーなことを言うんだろうけど。
「僕はまだ蜘戒さんに何もしてないじゃないか。ただ事実を言っただけなんだから」
作品名:朧木君の非日常生活(8) 作家名:たし