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ラベンダー
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走れキャトル!(3)~魔術師 浅野俊介 第0章~

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「うん。おかげさまでね。医者にかかったのも久しぶりだったよ。やっぱり薬って効くんだね。」

秋本がそう言いながら、注射をされた左腕を見た。
2人はしばらく黙りこんだ。秋本が口を開いた。

「…あのさ…実は…新曲ができてね。」
「!?…はい。」
「亮と作ったんだ。今、作詞家に回してて、まだ詞はできていないけど、今度また俺伴奏するから歌ってくれるかな。」
「…はい」

真美の目に涙が溢れ出た。秋本が驚いて慌てるように言った。

「いや、泣かなくていいから!…そんな感動的な曲でもないからさ。」

秋本は真美の横に座り、背中に手を乗せた。

「…黙ってて悪かったけど…わざわざ言うのも恥ずかしくて…それだけなんだ。ごめんね。」

真美は首を振った。

「…ごめんなさい…私…何も知らないで…」
「謝られるとよけいに辛いから…泣かないでよ…。」

秋本はただ真美の背中を撫でている。抱きしめたいが、できない。秋本はまだ真美の気持ちが自分から離れていると思っていた。
真美が涙を拭いながら言った。

「…常務…今日の晩は…空いてらっしゃいますか?」
「…え?」
「…今夜も無理なんですか?」
「…いや…曲ができたから…大丈夫だけど…真美はいいのか?」
「はい。」

秋本はとまどった表情で言った。

「…俺でいいの?」

真美は驚いた表情で、秋本の顔を見上げた。

「…いや…その…。こんな俺でいいのかな?」

秋本のその言葉に、真美の目に再び涙が溢れ出てきた。

(終)