妄想
Scene20
目の前の皿に並べられた餃子に彼女は顔をほころばせる。
「わあい、餃子だ。手作りなんです?」
「うん」
私が頷けば彼女はニヤリと笑う。
「しっかり濡らしましたか」
「はいはい、濡らしましたよ、しっかりと」
お決まりのネタにうんざりしながら答えると、彼女は早速餃子に箸を伸ばし頬張る。焼きたての餃子はどうやら熱かったらしく、咀嚼しながらはふはふと息を吐き出している。
「うう。熱い。けど美味い。白い肌の内側に秘められた、溢れんばかりの熱い肉汁が歯を突き立てた瞬間にほとばしるね」
「……あんた、その言い方どうにかならんの?」
彼女の台詞に力が抜けるのを感じながら苦情を申し立てる。
「へ? ナニが? グルメリポート風に言ってみただけだよ?」
ニヤニヤと薄笑いを浮かべてそう言う彼女に溜息が漏れる。
「はいはい。そうですね」
言い返す気も起こらず、そう流してから私も餃子に箸を伸ばす。熱いことはわかっているから端を少しだけ齧った。すると、予想以上の肉汁が齧ったところから飛んだ。それを見咎めた彼女はまた目を輝かせる。
「わぁ! 吹かせるなんて、テクニシャンね!」
「うるさい。もういい加減にして」
「私も今度」
「おい黙れ」