妄想
Scene10
放課後、人気の無くなった教室でうだうだとしゃべっていると、何かを思い出したように彼女が鞄を探り始めた。
「お、あったあった」
そう言って取り出したのはポッキーの箱。
「今日は何の日か知ってる?」
封を開けながら彼女が尋ねてくる。
今日は11月11日……ああ、そういうことか。
「ポッキー、プリッツの日ってこと?」
「そうそう、だから買ってきたの」
「あんた踊らされすぎ」
まんまと企業の思惑にはまっている彼女に苦笑しつつ、自分も差し出されたものには素直に手を伸ばしてしまっている。
ポリポリとかじっていると、ニヤリとする彼女。
「ねえ、ポッキーがあって二人以上人がいればやらなきゃいけない事があるんじゃない?」
「は?」
今度はなんだ。
彼女の含み笑いを見て、なんとなく想像はついたがそれは勘弁してもらいたい。
「ポッキーゲームをするぞ!」
「ああ、やっぱりか。やだ」
即答した私に彼女は文句を垂れる。
「え〜、なんだよ。面白くない奴だなあ」
「何が楽しくてそんなことをせにゃならんのよ」
「何? 私とだとドキドキしちゃう感じ?」
「アホか。違うわ」
「はぁ、全くヘタレてんなあ、この人は」
「なんとでも言え」
散々ヘタレだのチキンだのぶつくさ言っている彼女の言葉を聞き流しながら、ペットボトルのお茶に口をつける。
口の中を潤してふたを閉めると、ふてくされた顔で彼女がポッキーをかじっている。
そんなにそのゲームがしたかったのか。
そんな彼女を見ていたら、なんとなくさっき散々言われた腹いせがしたくなり、彼女がまた一本口にくわえたところを見計らって彼女の手をどかし、そこから猛スピードでかじり進めてやった。
すると、半分も行かないところであっさり折られ、顔を離されてしまった。
「なんだよ、ヘタレでチキンなのはそっちの方じゃん」
優越感に浸りながら彼女の顔を見ると、首まで真っ赤になりくわえていたポッキーも落としてしまって口を手で押さえている。
いつも不遜な態度の彼女にそんな表情をさせられた事に私は満足する。
「ななななな、何すんだ! この馬鹿たれ! こういうことは心の準備というものが……!」
「はいはい、すみませんねぇ。ヘタレさん」
その後も赤い顔で必死に言い訳する彼女を私はしばらくからかい続けた。
この時ばかりは彼女のことをほんの少しだけかわいいと思ってしまった。