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ひまつ部①

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双子



放課後のひまつ部にて。
今日も暇を持て余している俺達。
相変わらず大画面でゲームに夢中なティアとロリ。
今度は女の子じゃなくて男の子がたくさん画面に映し出されていた。
また別のゲームだろうか。
春樹は窓際に読書。何を読んでいるのかと思えば『この世の男を振り向かせる本。これで今日から男どもはアナタにメロンメロン♪』
どうやら女性関連のハウツー本だろう。春樹も女の子なんだな、としみじみ感じた。
これがもしいやらしい本だとしたら、どう見ても少年がエロ本を読んでいるようにしか見えないのがまた面白いのだが。
そんな春樹を想像しながら俺は含み笑いをする。

「はい、お兄ちゃんっ♪」
「お、さんきゅ」
陽向が紅茶を入れてくれる。しかし他の部員はただの水。おいおい、みんなにも紅茶を入れてやれよ、とツッコミを入れようとしたのだが、陽向の姿を見た瞬間紅茶を吹き出してしまった。

「お、お兄ちゃん! どうしたの!?」
「どうしたもこうしたもあるか! なんでお前メイド姿なんだよ!」
そう、理由はわからないが陽向の格好はメイド服に包まれていた。
つーか、どこから入手してきたんだその服…

「えへへ、どうお兄ちゃん♪ かわいい?」
くるりと廻る陽向にフリフリのスカートが一緒にくるくる回る。
自分の妹ながら確かに良く似合っていると思ってしまった。ダメだ俺は妹に甘いな。

「蒼空ー、陽向どうよー? いつもお茶入れてくれるからメイドの格好させてみたのよ! なかなか可愛いでしょ」
ゲームに夢中かと思えば、プレイしながら会話へ割り込んでくるティア。

「他にも衣装はあるぞ! 看護婦さんやうさぎさん、ぞうさんやきりんさんもあるぞ!」
「ロリ、なんか後半おかしくない? 衣裳っていうより着ぐるみだよね」
ロリが他にもあるよアピールをするとともに容赦なく春樹のツッコミが入る。
確かに後半は気ぐるみだな。

「そもそもなんで衣装を変える必要があるんだよ。別に制服のままでいいじゃないか」
「お、お兄ちゃんは制服フェチだったのね! わたしすぐ着替えるね!」
「ははぁ、蒼空はそっちだったか」
慌てふためく陽向と、意味深.な言葉で俺を責めるティア。
いや、そうじゃなくてさ。

「よーし! みんなでコスプレするわよ!」
「うむ、ロリが着るのはもう決めてあるのだ!」
「はるは、はるはOLさんがいいっ」
「わ、わたしも他の格好する!」
ひまつ部女性部員はみんなきゃっきゃと着替える衣装の話を始めた。
俺と言えば完全に蚊帳の外である。
女って服とか好きだよな… 制服だったら着る者考えなくて楽なのによ。

「アンタいつまでそこにいるつもり? 女の子が着替えるんだから外へ出て行ってよ! このスケベ!」
「私はお兄ちゃんがいても全然平気だよっ♪」
「へいへい」
ティアの突き刺さるような視線と言葉に後押しされるように俺は部室を出て行く。
妹の言葉は聞かなかったことにしよう。いろいろと問題発言な気がしてならない。

部室を出た俺は廊下の窓からグラウンドを眺めた。
野球部やサッカー部、陸上部など運動部がしきりなしに動き回っている。
よくもまぁあれだけ動けるものだな、と関心しながら特に興味ない絵柄に俺の視線は浮遊していた。

「蒼空、もういいわよ」
部室の中から入室許可の言葉をいただいたので俺は反動で失礼します、と言って入った。
目の前にはいつもと違う服装に身をまとった4人が立っていた。

「「じゃーん! どうよ、これ!」」
左から陽向。看護婦さんの格好をしているがその手に持っている巨大な注射器が全てを台無しにしている気がするが、正直似あっていた。自分の妹ながら可愛いと思ってしまう俺はダメな兄なんだと、本日2回目の自己嫌悪に陥った。

続いてロリ。何かのキャラクターなのだろうか。黒い服ではあるが結構肌の露出が多い。背中には黒い羽根が生えており、なんとなくコウモリを想像した。そういや昔悪党ゲームでバンパイア×バンパイアというものがあったな。その主人公はたしかコウモリだった気が。しかし、これまた恐ろしく似あっている。ただ肌の露出が多い割に色気を垣間見ることができないのはまだまだ子供なんだろうということにしておく。

その右はティア。これはシスターの格好なのだろうか。見た目だけは物凄くいいので黙っていればかなり絵になる。恐ろしいほどの美少女がニコニコと笑顔を振りまいている。が、本人の性格を知っているせいか、俺の第一感想は似合わねぇ、の一言だった。見てくれだけはいいのにな。

最後に春樹。4人の中で一番酷かった。まだその格好は早すぎるんじゃないか、という。
本人はOLの格好をしてお姉さんをアピールしたかったのだと思うが、どう見てもママの衣装をこっそり借りて来てみた女の子の休日といった件だった。

「お、お兄ちゃん… どうかな?」
「あぁ、良く似合ってるぞ。ただ、その注射器は要らないと思うが」
「バッカねぇ、この巨大な注射器があるから看護婦の姿が引き立つんじゃないの。嗚呼、この頭の悪いバカな男に幸あれラーメン」
照れながらもしっかりとポーズを決めつつ意見を求めてくる陽向と、それに謎の補足を入れるティア。
ただ一つだけ言えることはお前にバカ呼ばわりだけはされたくない。何が、ラーメンだ。アーメンだろうが。

「ロリはどうなのだ! このエロエロな服は興奮するだろう! 見るだけだぞ! 見るだけなら100000歩譲って特別に許してやろうぞ!」
「そういうことを軽々しく言うんじゃない」
俺はロリの頭を軽く小突く。どうしてそういう発想しかできないのかね、コイツは。

「お、お障りは禁止じゃ!」
「はいはい。でも、良く似合ってるぜ」
「――!」
俺が素直な感想を言ってやるとロリは黙って下を向いてしまった。

「ほぅ、付き離しておいてさり気なく持ち上げる。まさしくツンデレってやつね」
ティアが意味のわからないことを呟く。

「はるはお姉さんになれたかな!」
「…あ、あぁいいともうぜ。いつものはるとはちょっと違う雰囲気だな」
瞳を輝かせて俺に問いかける春樹に、とてもじゃないが正直な感想を伝えることはできなかった。
ただ、少しだけ言葉は濁しておいたが。

「で、誰が一番可愛い?」
「はいいいい!?」
ティアが唐突にそんなことをいうものだから心底コイツの頭を疑った。
そんなおもいきりややこしくなるタイミングに希望という名の助け船がやってきた。

「ロリ! ロリはいるかー!」
部室のドアがガチャリと開けられ、中へ一人の少年が入ってきた。
見るからにまだ幼い少年。栗色の髪がさらさらとしているが、自己主張の強そうな瞳はどこかの部長のようだった。別に誰とは言わないがな。

「よくもサッカーボールをぶつけてくれたなこんにゃろー! 決闘だ! 勝負だ! 戦争だ!」
入ってくるなりぎゃぁぎゃぁとわめき散らす少年。
この部室に来るやつにまともなやつはいないのか。

作品名:ひまつ部① 作家名:天宮環