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ひまつ部①

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ひまつ部設立の道



「あぁ、今日も無事一日が終わったな」
「そーーーらーーーーぁぁぁ!」
ホームルームが終わり、今日も無事学園生活が終わりをつげのんびりしようとしていた矢先のこと。
この平穏で心地よい雰囲気をいとも簡単に破壊する騒がしい声。
そう、ひまつ部部長ティアである。

「なんだよティア。俺の平穏な放課後に付け入るとは――」
「ちょっと来て、一大事よ! 多目的ルームが使えないの!」

ティアに引きづられやってきたいつもの多目的ルーム前。
部屋の入り口にはしっかりと施錠されていたのである。

「ねぇ、これどういうことよ! 何者かの陰謀ね! アタシが活躍することで何か不都合でもあるのかしら…」
「いや、むしろ特別教室は施錠されてるだろ。いつも開いてる方がおかしい」
「な、なんだって!」
初耳です、寝耳に水です! ザ・青天の霹靂! と言わんばかりの激しい「なんだって」を聞いたのはこれが初めてかもしれない。
それよりか、そんなことも知らないティアの方が残念で仕方ない。

「じゃぁ、アタシ達はどこで部活をすればいいわけよ!」
「いや、お前部の申請したんだろ? 部室棟に部屋がもらえてるんじゃないのかよ」
なんか嫌な予感がするが、部長であるこいつにまかせっきりな俺も悪い気がして、とりあえず質問から始めてみる。
そう、頭ごなしにモノを言うのは良くないのだ。

「部の申請? それなら校門傍の植木を伐ってるおっちゃんに部活やるよ! って伝えたけど。他に何かすることあるのかしら?」
平然とそう言い放つティアに俺はこの先の行く末が本気で心配になった。
お前、本当に何も知らねぇのか。大丈夫か? っていうかそれ先生じゃねぇから。

「あ、お疲れさまでーす。って、部室に入らないんですか?」
いろんな意味で心配になっていた矢先、問題の火種ロリと何かと頼りになる春樹がやってきた。春樹が疑問を投げかけるも、当然鍵の掛かっている多目的ルームへ立ち入ることはできない。

「あ〜、実はな…」
俺は簡潔に現在置かれている状況を説明した。
春樹はあ〜… と言わんばかりにジト目でティアを見つめる。
対象的にロリと言えば

「確かに、部の申請のやり方など知る由もないな! ティアは全力で頑張ってくれたんだ、誰も責めるようなことはしないぞ!」
「ロリ… ありがとう!」
とまたもやぎゅぅ〜と抱き合う始末。
もはやなんでもいいから抱き合う口実が欲しいだけだろうお前ら。
とりあえず部の申請が完了してないとなると話しは大きく変わってくる。

「とりあえず、部活の申請をしなきゃな。どうせ顧問の確保もできてないだろ」
「顧問ってなによ!」
半ば逆切れ気味に返される。俺、何か間違ってるか? なぁ、間違ってるか?

「このままだと部活できないだろう? 部の申請して顧問見つけて部室もらわないことにはどうしようもないだろうに」
「じゃぁ、アンタやってよ。ひまつ部雑用! 腕の見せ所ね!」
おいおい、結局俺がやるのか。
なんとなく予想はしていたとはいえ、実際にやるのは面倒でもある。
だが、しかし! これを断るとあとあと更に余計なことになるのは間違いない。
俺に選択権など存在しなかった。

「あ、津村井先生だ」
廊下の先に一人の男性教師がこちらへ歩いてくる。
春樹が情報によるとこの先生は津村井 仁(つむらい ひとし)。特定担当科目は数学らしいが、基本なんでも行けるという万能先生。
そして、特筆すべき点としてはスラリと細身ではあるものの、スポーツマンさながらのしなやかな肉体美。つまり引き締まっている、ということ。更には面倒見もよく性格が非常に温厚で優しくて頼りがいがあるという。そして何よりもイケメンという、3拍子揃ったオールマイティな教師らしい。
当然ここまで完璧だと女子生徒のみならず、他の女教師や生徒の親からも絶大な人気があるという。
男からすればちょっと嫌な気もするが、特に関わりのなかった先生なので俺は初見だった。モテる男か…

「津村井せんせ。津村井せんせ」
「あ、君は初等部の桜井さんだね。どうかしたのかい?」
春樹がたたたっと津村井先生に駆け寄る。
笑顔で春樹と目線の高さを合わせるその仕草はなんとも自然だった。

「せんせー、うちの部活の顧問してくれませんか?」
「ごめんねぇ、僕は今顧問を掛け持ちしているからこれ以上はちょっと厳しいかなぁ」
「そうですか… 忙しいところすいません。ありがとうございました」
残念、という表情の春樹。申し訳なさそうに立ち去る津村井先生。
いともあっさり断ってしまうものなのか。大抵、あのケースだと引き受けてくれそうな気もするが。完全と呼ばれるイケメン先生も、蓋を開けてしまえばそれほど完璧ではないんだろう。
…って、俺は何を考えてんだ。

「へぇ、人気がある先生ねぇ… みんな、ちょっと待ってて!」
「ティアどうしたのだ?」
「あの先生を顧問に引き込めば、うちの部活の注目度は間違いなく上昇するわ! 面白くなりそうだから、アタシが直談判してくるわ、任せておいて!」
ロリの疑問にニヤリと笑みを浮かべ津村井先生の後を追うティア。
俺は言い知れぬ不安が胸をよぎったのでこっそり付いていくことにした。

職員室に入ったティアはすぐ目の前で足をとめた。
どうやら津村井先生のデスクは入り口から近い場所にあったようだ。
これなら廊下にいても会話が聞こえるな。なんか盗み聞きみたいで嫌だけれど。

「ねぇ、津村井せんせ〜」
「君は高等部2年のティアさんだね、どうしたんだい?」
どこから声出しているのか分からないような甘ったるい声のティア。
普段の声からはあまり想像がつかないほどのブリっ娘ぶりに驚いた。

「アタシね、今新しく部活動を立ち上げまして… 顧問を探しているんですけれど、なかなか見合う方が見つからなくて… 津村井先生お願いできませんか?」
「ティ、ティアさん。さっきも桜井さんに断ったように僕はちょっと無理だよ。これ以上増やしても、顧問が務まりはしないよ」
「…せんせぃっ アタシ、この部活に残りの学園生活をかけているのです! 何が足りないのでしょうか!」
「いや、足りないとかではなくてね」
なんとなくだが、どんな感じでお願いしているのかが想像できるところが悲しいところか。

「わ、わかりました… そこまでおっしゃるのでしたら、せんせーが満足するまでアタシ… その…」
「ちょ、ちょっとティアさん! 何を!」
「うおっほん! 津村井先生! これはどういうことですか!」
おや? 何やら職員室が騒がしくなってきたな。ちょっと覗いてみるか…
ってぅぇ! うぉい! アイツ何やってんだ! なんで上着脱ごうとしてんだよ!

「ティアさんも何をしているんだ! 教師をからかうのもいい加減にしなさい!」
「…はぁ〜い」
津村井先生とは別の先生に叱られるティア。当然と言えば当然の結果である。
つーか、職員室て色仕掛けとか何考えてんだ。

「せんせェ…」
恨めしそうな声を吐きながら職員室を出るティア。
少し頬をピンク色に染め、潤んだ瞳をしている彼女ではあるがその表情は物凄く不機嫌である。
こういう表情ってなんて表現したらいいんだろうな。

作品名:ひまつ部① 作家名:天宮環