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おやまのポンポコリン
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novelistID. 129
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黄泉の国より帰りし子

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○ 三松村、(昭和・30年代〉照永洞の前。(秋の景)
 洞窟にはしめ縄が張られている。
 村人数人に抱えられ、強引に洞窟から引き戻される美也子。
 着物姿だが、着付けがくずれ、暴れた様子。
美也子「いやだ〜。どうしても、あの子を取り戻すんだ〜!」
   ススキの穂を掴んで抵抗する美也子。
   だが、村人達によって村に戻されて行く。
   そこへ自転車で駆けつけてくる駐在。
駐在「長老さん、あれは、いったいどうしたで?」
延岡「いやね。山内さんとこの娘さんで、美也子ちゅうだが」
矢島「火事で子供なくしちまったで、こうなっただ……」
延岡「可哀そうに、東京の嫁ぎ先からも追い出されただよ」
駐在「だども、なんで洞窟なんぞへ?」
   村人A、Bお互いに顔を見合した後、静かに語り出す。
延岡「駐在さんは、村に来て間なしやで、知るまいが……」
矢島「この村じゃ十に満たねえ子が死ぬと墓には入れねえだ」
延岡「つまり不吉だちゅうて、ほらそこの洞窟に入れるだよ」
   駐在、不気味そうに洞窟の方を振り返る。
駐在「ちゅうと、この洞窟の中に、子供の死体が……」
矢島「ああ、いっぱいあるだよ」
延岡「じゃが、美也子はおそらく死体取りに来たんでねえな」
矢島「んだな。今日は満月だで……」
駐在「と、言うと?」
延岡「この村には昔から伝説があるだよ……」
駐在「伝説……?」
   興味深げに聞き入る駐在。

○山内家、居間。
囲炉裏にくべる薪を折りながら話す山内・延岡と駐在。
山内は腕を組んで深刻な表情。
延岡「ありゃあ、野々村の念仏バアさんがいけねえだ……」
山内「そう、あのバアさんが、美也子に余計な事を言うただよ」
   熱心にメモをとる駐在。
   そこに里子が徳利を運んでくる。
里子「余計な事って、幸ちゃんの死体を取り戻せって事ですか」
山内「いいや、そうじゃねえ、生きた幸太だ!」
駐在「えっ、幸太君は死んだんじゃろう?」
延岡「この村にゃあ、言い伝えがあっての……」
   酒を飲みながら、おもむろに話しだす延岡。
延岡「子供が死んで最初の満月の夜に黄泉の扉が開くというな」
山内「美也子は黄泉の国から幸太を取り戻す気なんだろうて」
駐在「そんな……」
延岡「無論、バカな話に思えるじゃろうがの……」
山内「美也子にとっちゃあ唯一の道に思えたんだろうて」