ラビリンスで待ってて
Episode.9
八ヶ月ぶりに戻った圭介のマンションは、もう引越しの準備が始まっていて、大きなダンボールが積み上げられている。
窓辺に置かれたシングルベッドだけがまだそのままだった。
圭介は鍵をかけると、ネクタイを外した。
あたしは彼に近づき、開襟シャツのボタンを外し始める。
圭介の素肌が顕わになり、あたしは彼の胸に触れた。
温かくて滑らかな皮膚の下に激しい鼓動を感じる。
彼の長い両腕はあたしを抱きしめ、ワンピースの背中のファスナーが下げられていく。
圭介の顔が近づき、あたしの唇を貪り始める。
ワンピースがストンと足元に落ちた。
彼は裸になったあたしの体を乱暴に抱き上げるとベッドに寝かせた。
激しいキスが体中に撒き散らされる。
両手であたしの小さな胸を弄びながら先端の敏感な部分を噛んだ。
あたしは痛みと快感で思わず大声をだしそうになり、必死で枕を握り締めていた。
「け、圭介・・・今日はなんか・・・違うみたい・・・。」
あたしは喘ぎながら囁く。
彼は荒い息をしながら少し笑った。
「ごめん。今日は妹じゃないから、悪いけど遠慮したくない。文句があったら後で何でも聞くから・・・。」
圭介はあたしの両足を強引に開くと、その敏感な部分にも長いキスをした。
あたしの体は彼の舌が動く度に、痙攣したようにビクビク震えた。
体が溶けそうな感覚に我慢できず、あたしは泣き出す。
やがて彼の顔があたしの顔に近づいた。
あたしの好きな色素の薄い瞳は熱があるみたいに潤んでいる。
さっきまでセットされてた髪は乱れて額にかかってセクシーだ。
あたしの泣き顔を優しい顔で見つめた後、低い声で懇願するように圭介は聞いた。
「オレの女になってくれる?玲」
その声が、優しくて、切なくて、でもあたしは嬉しくて、泣きながら笑って頷いた。
それを聞いて、彼もにっこり笑うとあたしの頭を抱きしめた。
そして体が裂けるような痛みと、気が遠くなるような快感、味わったことのない幸福感があたしを襲った。
叫びだしそうなあたしの口を彼のキスが塞いだ。
あたしの腕は圭介の背中を這い、しがみつく度に爪の後を残した。
「好きだよ・・・玲・・・ずっと前から・・・。」
喘ぎながら、圭介はあたしの耳元で何回も囁いた。
あたしは快感に身を委ねてただ泣くしかなかった。
あたしたちは迷宮に閉じ込められてしまったかもしれない。
この迷宮は普通の人より障害も多くて、辛いこともあるだろう。
あたしたちの迷宮は誰にも知られてはならないのだから。
でも、もう出口を探すのはやめた。
あたしも、圭介も生きる道は違っても、いつもお互いを迷宮で待っている。
疲れた時、行き詰った時、いつでも帰って来れるように。
作品名:ラビリンスで待ってて 作家名:雪猫