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交差する橙

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"序章-終わりの始まり-"



 この気持ちはなんだろう。

 もやもやとした気持ちが心の奥底でうごめいている。そして、言葉にならない言葉が浮かびかかっては消えていく…。そんな感じだ。この現象にアテはある。辞書やインターネットで調べれば、その言葉の意味は表示される。だけれど、その言葉の意味を理解出来る程の知識や経験を僕にはなかった。

 この街に唯一ある歩道橋。よく晴れた夕方に歩道橋の上から一番星を見つけることが出来れば願いが叶うという。

 僕は夕方部と出会い、この伝説を見届け、そして、僕は…願いを叶えることが出来た。そこにいた夕方部全員が喜びを分かち合っていたはずだった。

―はずだったんだ。

だけど、僕は見てしまった。喜んでいるはずだと思っていたのに、彼女はほんの一瞬、悲しい顔をしていたんだ…。

そう。そして、この気持ちに気づいてしまった。いや―気づいてしまったから分かる。僕はもっと前から、出会った時からこんな気持ちを抱いていたんだ。でも認めてしまったら何かが壊れてしまう…。そんな気がして僕はその気持ちに気づかないふりをしていたんだ。

 この気持ちはなんだろう…。

 彼女はどうして悲しんでいたんだろう…。

作品名:交差する橙 作家名:こめっち