インパラの涙
プロローグ
まだ夏の日差しが肌を焼く9月の上旬。
新幹線のプラットホームに美紀は一人立っていた。
もうすぐ12時になろうとしている。
日差しがきつい。
暑さと湿気で肌がべたつく。
せっかくカールしてきた髪も萎びたわかめのようだ。
慣れないスカートも素足に巻きついて気持ちが悪い。
だが、胸が締め付けられるような興奮と緊張で美紀はそれどころではなかった。
「まもなく大阪行きひかり000系が到着します。白線の内側に・・・」
プラットホームにアナウンスが響いた。
胸の鼓動が早まる。
美紀はまだ姿の見えない新幹線を線路の彼方に探した。
やがてこちらに向かってくる新幹線が見え始め、その輪郭がはっきり見えてきた。
美紀は鼓動を落ち着かせるように深呼吸をして、白線の後ろに下がった。
記憶の中の6年前の夏は、新幹線を待つ美紀の脳裏に焼きついていた。